藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

投薬か否か。

yomiuri online 佐藤記者の精神医療ルネサンスより。

ある患者を前にして、いかに「薬を処方するか、またはせぬか」ということは、患者の側からは切実な問題である。
だが現在の医療は「そうした場面」をあまり作り出してはいない。
専門化している医師は医師、薬剤師はそれとして、結果患者自身の「総合医療」という観点は後手後手に回っているという感は否めない。

今回の記事では、一般的に処方されている"ベンゾジアゼピン系"の睡眠薬が取り上げられているが、これはものの一面であり、同様の処方をされている薬は多いだろうことは予想に難くない。

薬にいわゆる「副作用」がまったくない、と思う患者にも問題はある。
いわゆる「自然治癒」のような回復を目指さぬ化学療法には、「何がしかの化学的な作用があってしかるべき」というくらいの、患者側の認識も必要ではないかと思う。
ただそうした場合に、特に高齢者に処方される薬の種類と量は、確かに過多ではないかとも思う。

睡眠薬のような分かりにくい症状に対しての処方については特に、また今一度「降圧剤」とか「血液サラサラ」などという高齢者お決まりの処方薬についても、保険適用か否かを含めて「薬ありき」の処方になっていないかどうかは、再検討の必要があるように思う。

医師法薬事法だけでなく、この問題は「国民の健康を考える」という意味で、これからの高齢社会の考え方の規範にもなるだろう。
介護や高齢者の尊厳、といった問題にも踏み込んだ、先進の課題なのだと思う。
ぜひ日本が先端を行くような議論と処策をうむようになるべきだと思う。

抗不安・睡眠薬依存(1) 患者依存させ金もうけ!
6月7日の夕刊からだ面に掲載したベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬睡眠薬)の常用量依存(適正量でも起こる薬物依存)について、非常に多くの反響が寄せられた。

医師に「安全」と言われて長く飲み続けてきた薬で、知らぬ間に薬物依存に陥り、服薬を中止するとひどい離脱症状が出る。ベンゾジアゼピン系薬剤の処方量が異常に多い日本では、もともとあった症状よりも、薬物依存のため薬をやめられないケースが目立つ。

50代の女性は「病院では『長く飲んでも大丈夫』と言っている薬ばかりなので、記事を見てびっくりした。友人もこの中の薬を飲んでおり、記事をすぐに読ませたい」と電話で語った。抗不安薬を1日3回、15年近く飲んできたという70代の男性は「副作用のない薬と言われ、いつも大量にもらい、たくさん飲んできた。医師に相談して飲む量を減らしたい」と話した。「減らし方も詳しく記事にして欲しい」など、続報を望む声も多かった。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、20年以上前から常用量依存の問題が知られ、処方期間を4週間未満などに限定するガイドラインを設けた国が多い。それなのになぜ、日本の医師たちは「長く飲んでも安全」と言い続けてきたのか。

まず考えられるのは、医師の勉強不足だ。だが、ベンゾの薬物依存や離脱症状の問題は、国内でもかなり前から指摘されてきた。精神科臨床の百科事典ともいえる「臨床精神医学講座」(中山書店)にはこうある。

抗不安薬睡眠薬ベンゾジアゼピン
◎ 軽度であっても日常生活や社会生活に影響を与える可能性のある副作用については情報を提供する
◎ 薬物依存に関する知識を高めるとともに、離脱症状については具体的な説明が必要である

にもかかわらず、「事典」にはっきりと書かれている離脱症状を、「起こらない」「すぐに治まる」と強弁する医師もいる。

こうした医師がいう「安全」とは、一体何を指すのだろうか。患者が自殺衝動にかられて大量服薬しても、死ぬことはないという意味での「安全」なのだろうか。患者の健康よりも、自分の立場が「安全」という意味なのだろうか。

さらに気になるポイントがある。右に掲載した写真は、ある国立精神科病院(現在は国立病院機構)が2003年度に作成した報告書の一部だ。ベンゾの利点と欠点をまとめた表で、写真の下部、アンダーラインの部分に注目して欲しい。


ベンゾジアゼピンの医師にとっての有用性
医院経営への影響
常用量依存を起こすことにより、患者が受診を怠らないようになる

患者を薬物依存に至らしめ、薬欲しさの受診を続けさせる。その結果、医者はもうかり万々歳、と言いたいのだろう。

精神科医を「白衣を着た売人」と呼ぶ人もいるが、まさにこれは犯罪的ではないか。