藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

小さいなりだからこそ。

鉄が当たり前の航空機ボディに「繊維由来」の素材が採用されている。
そして、ドラマの題材にもなった神戸製鋼の高炉の一つが消えるという。

鉄のメーカーそのものでありながら、「非鉄分野」がいつか主流になることを考える。

自己否定の発想をどれだけ持てるか。

業界単位で。
会社単位で。
組織単位で。
そして自分自身で。

常に脅かされる自身の立場をどう考えるか。
守るか攻めるか。

一旦成功した大企業が悩むのはこういうことではないだろうか。
翻って自分たちは大企業ではない。

だから、「今の主業はあっという間に他者に取って代わられる可能性がある」という前提で、「だから将来は何をするか」を考えられなければ中小企業の持ち味などないと思う。

小さい体躯だからこそ、どれだけ俊敏に動けるか。
自分の強みを考えながら過ごさねばならない。

資産が遺産になる日 異色のエース、常に育成 Disruption 断絶を超えて(4)

 兵庫県明石海峡を望む神戸製鋼所の神戸製鉄所。10月、ここから鉄鉱石と石炭を燃やして鉄を作る「高炉」の火が消える。神鋼で残る高炉は加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の2基だけになる。

日本カーボンの子会社「NGSアドバンストファイバー」が開発した繊維素材(富山市

 「100年後に高炉で作る鉄が使われているかは、分からない」。川崎博也会長兼社長(62)は言うが、10年後には衝突しない自動運転車が実現して軽くて柔らかい素材で事足りるかもしれない。アルミやチタン合金など非鉄分野がいつでも「主力」になれるよう種まきを怠らない川崎会長の表情には緊張感が漂う。

 これまでの成長を導いてきた「資産」が突如、「遺産(レガシー)」になる。そんな絶え間ない技術革新が製造業に「断絶」を迫る。次の成長の種をどう見つけ、育むか。

 4月1日に3万人のグループ従業員のトップに立つ日立金属の平木明敏取締役(56)が奮い立つ。「未来永劫(えいごう)、今の材料が使われると思うな」。社内で檄(げき)を飛ばす。

 きっかけは1年ほど前にエンジニアから上がってきた報告だった。「主要取引先の航空機エンジンメーカーが相次ぎ採用を決めている」。その新材料は「CMC」。航空機エンジンで使うニッケル合金と比べて軽くて耐熱性に優れる。驚くのはそれが繊維由来ということ。ニッケル合金を成長の大黒柱に位置づける日立金属にとっては息の根を止められかねない。

 「これはとんでもないことになる」。来春、埼玉県熊谷市に開設する研究所では自らCMCの開発に着手する。平木氏はもはや「金属」の看板にこだわりは見せない。

 実は日立金属を脅かす繊維素材も断絶を見据えて生まれた。開発した日本カーボンの主力は製鉄所の電炉に大電流を通す黒鉛電極と呼ぶ部材。中国の鉄鋼メーカーによる過剰生産のあおりで需要の先行きが見通せないなか新素材に活路を見いだした。富山市の工場で2017年半ばの量産準備に入った子会社の武田道夫社長(57)は「金属の世界を塗り替える」と意気込む。

 技術革新のインパクトを予測するのはたやすいことではない。富士フイルムホールディングスもそうだった。

 世界トップの座に上り詰めた写真フィルムの需要もカメラのデジタル化で00年代に年20〜30%の勢いで縮小。世界で5千人の人員削減に追い込まれた。古森重隆会長(77)は当時を「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状況だった」と振り返る。

 痛みを伴う改革も生き残るため。今ではデジタル関連材料や医薬品が収益の柱に育ち、事業の入れ替えも進んだ。

 古森氏は言う。「一人ひとりをおもんぱかっていては指揮官は務まらない」。正しいと思う道を進む。破壊的な革新技術が次々に生まれる今こそ、経営者にはその覚悟が問われる。