小泉純一郎と毛沢東

小泉首相の芸術的とも言える政治策謀・人心掌握術には、いやはや驚嘆させられる。今や、郵政民営化を国民レベルの投票行動に移すことに成功。党内政敵の粛清においては、都道府県の党支部レベルにまで小泉改革の踏み絵を迫っている。この試みが成功裏に終われば、自民党の中で、小泉首相の政策に逆らえる人は、最早、いなくなっているのではなかろうか。

何より、その強権姿勢と同時に国民の支持を保っているところがすごい。民主党の支持率は思われたほどには伸びていない。メディアの腰も砕けてしまったのだ。衆議院解散前は、郵政法案の反対派をヒーロー視してみたり、今度こそ民主党が政権を獲って二大政党制が実現する、などと吹聴していた新聞・テレビであったが、そうした論調は、解散と共に霧散してしまった。結局、小泉首相の一貫した態度を、メディアも含め、過小評価していたとしか言いようがない。

革命前と革命後の政権が、同じリーダーによって統率される―このリーダー像は、文化大革命によって政敵を一掃した毛沢東・中国主席に、よく似てないだろうか。毛主席も、農民層の厚い支持を背景に、若い世代による年上世代の駆逐を実施。全体の若返りを図りつつ、自身は主席の身分を保って国家に君臨し続けた。小泉首相も、小泉革命、小泉改革、と叫ぶが、リーダーお手盛りによる革命、つまり、政敵のシャッフルと自己権力の強化という側面は否めない。小泉純一郎毛沢東が似ている、といえば中国からも異論が聞こえてきそうだが、わが日本国の首相の才覚を過小評価することなく、選挙の行方を見守りたい。