米国はエンロン・ショック、日本はライブドア・ショック

東京証券取引所は18日午後2時40分に株式の全銘柄の取引を停止した。「ライブドアショック」をきっかけに個人投資家などから小口の売り注文が殺到。株式の約定件数がシステムの処理能力の限界に迫り、株式の清算業務に支障をきたす恐れがあると判断した。19日以降に関しては(1)午後の取引開始を30分繰り下げ1時からとする(2)注文件数が850万件、または約定件数が400万件を超える場合には全銘柄の売買を停止する、などの措置を取る。

 ついにライブドアが東京証券取引市場をフリーズさせてしまったのか。エンロン・ショックに米国市場が震撼したことがあったが、ライブドア・ショックがマーケットを揺るがしている。海外のマーケットにも波及しているようだし。しかし、事件としてみると、通信業界で買収、買収で急成長したものの、粉飾が発覚して一転、地に墜ちた米ワールドコムのケースに似ているのだろうか。検察は、グリード(強欲)がバブルを起こすことを嫌ったのだろうか。ちょっと「国策捜査」の面もある?

FTはマーケットをどう考えるのだろう

18日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は「年老いた守護者の復讐(ふくしゅう)」と題した社説で、ライブドア証券取引法違反事件を取り上げた。捜査結果はともかく、日本には「堀江貴文社長のような旧体制の破壊者がこれからも少なからず必要だ」と論じた。同紙は事件発覚により、フジテレビ問題以来、堀江氏を疎ましく思っていた「企業社会の体制派たちは復讐の味を味わっている」と指摘した。

 う〜ん。擁護論をぶちたい気持ちもわかるけど、しかし、マーケットのルールを破ったのだったら、無理があるのではないだろうか。ウオールストリートが起きたことが日本で起きただけともいえるし、米国ではもろもろの事件から企業倫理が見なおされたわけで、日本もその時期に入ったといえるわけで、それについてはどう思うのだろう。ルールを破ったかどうかが争点で、それを抜きに「復讐の味」というのは無理があるよなあ。ホリエモンが好きか、嫌いか、というレベルの議論になってしまうんじゃないか。旧システム破壊者の役割は果たし、その功績はあると思うけど、だからといって、何でも許されるわけでもない。ワールドコムも通信秩序の破壊者で、その点で意味のある存在ではあったわけだが、投資家に対する責任を果たしたかどうかと言うのは、また別の問題で、いま、その責任を問われている。FTはそのあたりをどう考えるのだろう。いま報道されていることがでっち上げだという検証報道をしないと、この社説は完結しないのだろうか。「捜査結果はともかく」で本当にいいの? ホリエモンだけが日本の新世代の代表者ではないし、もっと若い世代に良い経営者がいると思うけど、そのあたりを見ていないのでは。FTは、論のための論じゃないだろうか。
 ただ、いまメディアに報道されている内容をみると、東京地検特捜部がなぜ粉飾ではなくて、風説の流布で入ったのかはわからない。旧体制の敵かどうかではなくて、バブル気分をつぶしたかったのではないだろうか。80年代のオバカな日本経済の再現を避けたいというのが国家の意思のような感じがするんだけど。大体、小泉政権なんだから、ホリエモン的なものは敵じゃないし。何だか、FTは違う気がする。旧エスタブリッシュメントがこれで喜んでいるのはわかるけど。