「隠し砦」と「つぐない」

今日は出勤して自然再生ハンドブックの仕事をするつもりだったが、大学は停電のため、夕方まで仕事ができない。休養をとれという天命だと勝手に解釈して、映画を見に出かけた。たまには日曜日に休養しなければ、体が持たない。
まずは、「隠し砦の三悪人 The Last Princes」。有名な黒澤作品のリメイクである。ネットでの評価は大きくばらついている。傑作だという評価もあれば、観るに値しないという評価もある。このような場合、観て確かめるに限る。感想はといえば、とても面白かった。まず、阿部寛がかっこいい。「大帝の剣」ではB級ヒーローの役回りで少し可哀想だったが、今回は本格的な武士役。これが見事に決まっていた。三船敏郎に劣らない貫禄だ。今後は時代劇での出演が増えるのではないだろうか。
ヒロインの長澤まさみも凛とした風格があって良かった。この人は、やや大振りの演技しかできないのではないかと心配していたが、今回は一皮むけた感じがした。武蔵に「裏切り御免」と言われたあと、別れのつらさ、武蔵への感謝、めぐりあえた喜び、姫としての決意と続く心の変化を表情で演じたシーンはお見事。まだ初々しさが残る演技で、満点とはいえないだろうが、観ていて気持が良かった。この作品は原作と違って、雪姫の成長物語である。長澤まさみの演技力なしには成り立たない脚本だったが、見事にこなした。
三悪人」の残る二人、武蔵と新八も、敵役の鷹山刑部も個性的な登場人物であり、存在感がある。鷹山刑部は明らかにダースベーダーだが、『スターウォーズ・エピソードIV』のアイディアは黒澤の「隠し砦」を元に考えられたとジョージ・ルーカス自らが話しているそうなので(→Wikipedia)、むしろ本家のアイデアを現代版にしたものと言えるだろう。
ストーリーもテンポも良い。「観るに値しない」という評価は、リメイクへの反発からのものだろう。
「つぐない」は愛についての無知からとりかえしのつかない罪をおかした少女が、愛を取り戻そうとする話。しかし、戦争という現実は、罪をつぐなう機会すら奪っていく。少女の過ちのために仲を引き裂かれた二人は、再びめぐりあうが、戦争が二人の仲を再び引き裂いていく。老いた少女の告白が切ない。
これまで観たことのないタイプの映画である。ラブストーリーであり、戦争映画でもあるが、つぐなうことのできない罪を背負って生きた女性を通じて、生きることの意味を問いかける映画でもある。
この映画で描かれた困難に比べれば、私が直面している困難など、たいした問題ではないのだと痛感する。
さて、週末は終わった。
先週後半はジンリョウユリの調査のため徳島に出かける予定だったが、開花が遅れているという情報が入ったため、調査を延期した。すると、どっと疲れが出て、風邪気味の喉に悪化の気配があったので、通院して、3日間抗生物質を服用した。そのおかげでかなり復調した。
停電から回復した夕方には、研究室に出て、Yさんとジンリョウユリの調査の打ち合わせをした。彼女は明日の夜、徳島に発つ予定。私は自然再生ハンドブック編集会議などがあり、今週は動けない。でもジンリョウユリの研究に関してはYさんが情熱を傾けているので、きっと良いデータがとれるだろう。