『女神のデパート3 街をまきこめ! TVデビュー!?』(菅野雪虫)

つぶれかけた老舗デパート弁天堂の再建ストーリー第3弾。消費が落ちこむ8月を前になんとかデパートを盛り上げようと、結羽ははりきります。
序盤は結羽とおじさんがさまざまなデパートをまわって、社会科見学的な楽しさを提供してくれます。そして結羽は、夜のデパートに宿泊させる企画を考えつきます。しかし、宿泊企画となると夜に従業員をかり出さなくてはならなくなります。それを強制できないということで、企画は暗礁に乗り上げます。弁天堂は従業員に優しいホワイト企業のようです。ディーバ産業のはるかさんも従業員から搾取したらダメだって言ってるし、この世界の経営側はホワイトでうらやましいです。
それはともかく、従業員のモチベーションを上げるアイディアを思いついて宿泊企画はなんとか実現することになります。すると今度は商店街との対立問題が持ち上がってきて、悩みは尽きません。
商店街の人は廃業したとしても住むところは確保されているので、とりあえず生活はできます。しかし、デパートは従業員の生活を守らなければなりません。商店街とデパートの経営陣の埋めがたい意識の差が問題として浮上してきます。商店街と弁天堂が不仲になったきっかけも明かされます。以前の選挙時に、商店街が推す候補者に投票するよう弁天堂が従業員に要請しなかったことを恨まれていたようです。ホワイト企業弁天堂の好感度は上がっていきますが、大人の世界は複雑でつらいことが多すぎです。「女神のデパート」シリーズ、社会派児童文学として容赦がありません。
心配なのは、結羽がすっかり労働中毒になって、夏休みになっても「うわー、働きたいのに! 労働したいのに!」とダダをこねる変な子どもになってしまったことです。そんな結羽に労働を禁止して勉強しろと命じる母親がまっとうなのが救いです。ところが、父社長がとんでもない決断をして次回への引きとなります。まだまだ波乱の続きそうな「女神のデパート」、続きが待ち遠しいです。