ベンチャーラボ、知的財産に投資

 技術評価のベンチャーラボ(東京・港、山中唯義社長)は未上場企業の知的財産
を対象とした投資を始める。出資する代わりに技術特許など企業が持つ知財の使用
権を有償で取得。知財が生み出す利益の一部を配当として受け取る。出資と異な
り、事業が計画通りなら投資先企業の上場や他社への株式譲渡をせずに資金回収で
きる。年間10件程度に投資する計画。
 ベンチャーラボが運営するファンドが特定目的会社(SPC)を設立。出資金の
代わりに知財の使用許諾料を支払う。技術特許やコンテンツの使用権など知財を使
用する権利はSPCに移転するが、企業側はSPCに了解を得て知財を活用した事
業を継続する。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20070619AT2E1600218062007.html

九州大、バランススコアカード導入で改革実現度を評価

九州大学は、教員、研究者、職員などの構成員が大学改革に取り組むための個人目標や評価指標などを具体的に定めるツールとして、2007年5月からバランススコアカードを試験運用し始めた。九大全体向けの経営陣版に加えて、農学研究院向けと大学病院向けの3種類のバランススコアカードを運用し始めた。
 日本の大学で、経営戦略に沿ったプロセス改革を各構成員に実行させるバランススコアカードの導入は九大が初めて。バランススコアカードの活用によって、「時代の要請に合う新しい大学としての知識創造型マネジメント態勢の構築を目指す」と、九大の構造改革担当の渡辺浩志理事は言う。
 梶山千里九大総長をはじめとする経営陣は、2004年度に大学の中期計画を定めた。九大版バランススコアカード「QUEST-MAP」は、その中期計画に基づく経営戦略が一目で分かる見取り図の役目を果たす。全体像の把握から、各構成員や各部局が大学改革に取り組む際の個別の目標設定や、その達成度評価などを具体的に把握できる仕組みになっている。
 元々、バランススコアカードとは企業が経営戦略の実現度合いや達成度を評価する仕組みである。一般に「財務」「顧客」「業務プロセス」「イノベーションと学習」の4つの視点を軸に、企業戦略の中で各社員や各部署が個別の実施項目とその数値目標、評価指標を決め、「Plan-Check-Do-Action」のPCDAサイクルを実施し、目標を達成するやり方を取っている。
 最近は、企業だけではなく、「東京都や福岡市、神戸市などの地方自治体や三重県立病院や聖路加国際病院などの病院などが戦略目標に対する各構成員の個別目標や達成度などを設定し評価するツールとして導入するケースが増え始めている」と、九大は説明する。

大学独自の4つの視点を設定
 「QUEST-MAP」は、4つの視点として「学外ステークホルダー」「学内ステークホルダー」「教育研究環境」「財務・業務運営・評価」を設けることで、独自の大学版を開発した。
 九大全体向けの「九大QUEST-MAP」は、現経営陣が進めている大学改革の主要戦略や重点取り組みを表形式に表現したもの。世界的教育研究拠点の形成を実現するための九大改革を4つの視点ごとに分解して具体的に表現し、できるだけ具体的に説明している。
 この表によって、九大の構成員は改革の全体像を把握し、自分が大学改革にどう参加するかを決めることができる。また、自分が設定した、教育や研究に関する目標の位置づけや整合性を把握し、定期的に達成度合いをチェックする。
 九大は同時に、大学院の研究組織である農学研究院向けの「農学研究院QUEST-MAP」、九大病院向けの「九大病院QUEST-MAP」の2つを設けた。同じ部局の構成員同士が戦略目標への理解を深め、目標実現に向けて個人としての数値目標を設定するツールとなっている。ただし、数値目標とその達成度評価は個人や各部署の評価には用いない。あくまでも組織の戦略達成の目安として使うという。
 九大版バランススコアカードの仕組みを考えたチームQUESTによると、バランススコアカードは「九大の構成員が大学全体と各部局、個人の各層を関連づける戦略的な思考を身につける有効なツール」だと考えている。
 これからの国立大学法人は法人間の競争の中で、法人としての目標を立て、それを実現することが重要になる。大学本来の構成員の多様性と自由度を保ちながら、各人の大学改革への取り組みを1つの力にまとめあげるマネジメントが求められる。九大版バランススコアカードは大学の目標と個人の目標を突き合わせ、整合性を取るツールとなる。
(丸山正明=日経BP産学連携事務局編集委員
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070614/127452/