筒井康隆と無断盗用

ヘル (文春文庫)

ヘル (文春文庫)

単行本を買い忘れていたので、文庫化されたのを機に購入。本編を読み始める前に巻末の「筒井康隆を知るための49問49答」を拾い読みして、あっと声を上げそうになる。

Q27 作家生活を振り返って、一番「ドキッ」としたのは、何でしたか?
A27 やはり科学評論を無断盗用してしまったことでしょう。小説ではないのだからいいだろうという安易な考えだったんですね。三十五年も前です。あの時は直木賞候補になっていたものだから、ちょっとした騒ぎになりかけた。以後、気をつけるようにしております。

じつはオレはこのところ、「若いころの筒井康隆が学術論文を丸ごと引用して問題になったことがある」というおぼろげな記憶に悩まされていたのだ。これが事実なのかどうかどうにも確証がなく、「人力検索はてな」あたりで質問しようかと思っていたところに、この発言である。欲を言えばどの作品で誰の文章を盗用したのかを知りたいが、ここまで判ればあとはどうにでも調べようがある(でも詳細を知っているひとがいたら、ぜひ教えてほしい)。そしてオレの記憶にまったく間違いがなければ、この盗用事件がもとで「小説の末尾に参考文献一覧を明記する」という慣習が生まれたはずだ(これまたもし詳細をご存じのかたがいたら……)。
ともあれあの筒井康隆がしおらしく反省しているのだから、他人の文章の剽窃や出典を明記しない引用など、するものではない。

追記

Googleで検索したら、1968年に『SFマガジン』に掲載された「邪学法廷」という短篇であることがあっさり判った。これは新潮社版の「筒井康隆全集」にも収録されていないとのこと。

ありきたりな注文

夢を与える

夢を与える

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

本当にありきたりな注文で申し訳ない。決して品揃えが悪いわけではない近所の書店で見掛けないのだ。『東京から考える』、どうせ東京論の本なんか地方都市で売れるはずはないと、書店側が判断しているのだろうか。