東京マンハッタン? from 豊海水産埠頭

大前研一著 『「知の衰退」からいかに脱出するか?』 より

いまの東京で私がいちばん好きな景色はというと、東京のスカイ」ラインを勝鬨の先端から眺めることである。(中略)私はこの15年間、時間があれば日曜日ごとに自転車か車でそこに行き、その様子を眺めてきた。そして思うのは東京マンハッタン化とでも呼ぶべき出来事が、“この15年間で起こった”ということである。そして、この間、何が起こっていたかということを考えるのだ。それは「失われた10年」という言葉に象徴されている。(中略)この国ではみんなが口を揃えて「失われた、失われた」と言っていたために、人々が本当に失われたような気持ちになっていたに過ぎない。まさに「失われた」は呪文であって、この呪文に惑わされなかった企業は“ちゃんとやっていた”のである。「失われた10年」とそれに続く数年の間に、東京の地価は下落を続けた。そこをチャンスとばかりに、都市の再開発は進められてきたのである。

大前研一氏の言うこの景色を見てみたいと思ったが、本文だけでは、勝どきの先端というのが何処を指しているのか正確には把握できない。常識的には、埠頭のことを指しているのだろうが、折角なので調べて見ると、愛知県経営者協会の記念講演において、勝どきの先端の埠頭であるということがはっきりと述べられている。つまり、豊海水産埠頭だ。地図上では、この位置となる。

地図から予想する限りでも、とりあえずお台場から東京方面までの240度程度視界が確保されてそうだ。埠頭の構造次第では、リバーシティのある月島の先端部分までの270度の景色が見える可能性もある。眼前には竹芝、汐留の高層ビル群があるはずだし、これは確かに期待できるかもしれない。

早速行って見た。

現地に着くと、実に想定通りの景色が広がっていた。
左手方面にはお台場のフジテレビが確認でき、レインボーブリッジの付根から、芝浦、竹芝、汐留と高層ビル群が続いている。埠頭が横長で、浜離宮庭園の向かいまで行けるため、東京方面から、築地の聖路加タワー、月島のリバーシティの一部まで見える。

なるほど、確かに眺望は良いのだが、対岸が遠いので、せっかくの高層ビルもあまり迫力がない。あぁ、高層ビル群だ、と思えるのは、竹芝、汐留の辺りだけで、お台場は当然として、芝浦や東京方面は遠過ぎてあまり感動が無い。目立つのは前述した、聖路加タワーとリバーシティ、それと国立がんセンターくらいだ。

ただ、大前研一氏は、勿論これを東京のマンハッタンだ!と言っているわけではなく、失われた10年と嘆いて東京の成長が低迷しているというのは嘘だ、と主張しているに過ぎないので、期待して損をしたと憤るのも見当違いというものだろう。

ちなみに、マンハッタンは見れないが、この埠頭は視界を遮るものが何も無いので、非常に眺望は良く、自分の行った土曜の昼過ぎでも釣り人が4、5人いるくらいで、景色を見に来ている訪問客がほとんどいない。勝どき駅から歩きで15分程度と少々遠いのだが、東京湾岸の夜景を見たい人などには非常にお勧めなのではないかと思う。