「下流社会」の次は「ジェネレーションZ」?三たび三浦展

私は特に三浦展ウォッチャーというわけでも何でもないのだが、たまたま私が講読しているPRESIDENTという雑誌がよほど彼の言説を貴重なものとして扱っているのだろう、最新の2007年11.12号にまたも出てきてしまった。
題名は「緊急報告「ジェネレーションZ」の発見〜女子高生の20%「なりたい職業=キャバクラ嬢」」

彼の主催するカルチャースタディーズ研究所が今度は2007年時点の15歳から21歳を対象として「ジェネレーションZ」と名付け、アンケート調査を実施したとのこと。

前文を抜粋すると下記の通り。

・Z世代はネット世代。彼らは小学校時代から携帯電話を駆使し、場合によってはパソコンを使っている。
・先行世代は「酒鬼薔薇聖斗」に象徴される「キレる14歳」「キレる17歳」と呼ばれた世代。Z世代もまた最近、親を殺害するなどの事件を相次いで起こしている。
・調査はパソコンを使ったインターネット調査を一回、停滞電話のサイトを使った調査を二回実施。

前文の段階ですでにつっこみたい箇所は数多いのだが、それもこのあとに書かれている「Z世代の4つの特徴」に比べたらかわいいものだった。

1.女子の男子化

自分を「がさつ」と思うのは、女子正社員で28.8%だが男子正社員では8.2%しかいない。

そもそも女性と男性の「がさつ」の定義が違うのではないか?

ほかにも「気が強い」「だらしない」「おおざっぱ」などの多くの項目で、かつては男子的だと思われていた性格の傾向が女子の方で強くなっている。

ステレオタイプも極まれり。

このような特徴には明らかにジェンダーフリー的な価値観の浸透が影響していると言える

おいおい!今度はジェンダーフリーバッシングか。

2.非合理主義の台頭

前世、死後の生まれ変わり、軌跡を信じるなど、非合理主義的傾向が強い。たとえば女子高校生の54%、男子高校生の50%が人間には前世があると信じており

設問項目と回答の選択肢を見ないと何とも言えないが、これって何と比べて「傾向が強い」と言ってるのか?
挙げ句の果てが

十代の少年少女が親を殺害する事件が相次いでいるが、殺しても生き返ると考えているのかもしれないと思いたくなる結果

と書いているところを見ると、これを言いたいがための指標ではないのか、と勘繰ってしまう。

3.日本好き

着物、浴衣、甚平、手ぬぐい、花火、よさこいなど、和風の服装、小物、行事を好む

いや、前者はファッションだし、よさこいが「行事」とはこれいかに。

女子高校生ではよさこいを踊ったことがある人が53%、男子高校生でも48%いる。

体育祭などで採用されているのではないかと思われる。これだけで「日本好き」?

地域社会の中で人生の目標を見つけ出せずに無為に過ごしている若者、いや、若者だけではない地域住民全体の感情のはけ口として、よさこいが求められているのかもしれない

あのー、これってよこさいをイベントとして楽しんでいる方々に失礼では?それに昔の盆踊りとどう違うのか?

4.ゆるい職業意識

なんと女子全体の22.3%、高校生の19.9%、大学生の21.3%、正社員の32.6%がキャバクラ嬢になりたい、してみたいと答えているのだ

えーと、「なりたい」と「してみたい」の間には大きな隔たりがあるはずだが、これを一緒くたにして質問してるとすれば社会調査のイロハのイも守られていないとしか思えない。

まとめとして

以上のように見てくると、Z世代には、バブル崩壊後の日本社会における価値観の溶解が反映しているかのようである。そしてそこに生活のIT化の影響が確実に見て取れる。「下流社会」でも書いた通り、IT化が価値観の溶解を助長しているような面が見えるのだ。

とあり、犯人は「IT化」だと言いたいらしい。

どうやらこの記事は入り口に過ぎないようで、スタンダード通信社と共同で「Z世代研究のための企業コンソーシアム」という会を立ち上げるとのこと。またぞろ俗流若者論を展開してくれそうで、要注意かもしれない。

一学期・二学期の履修授業

大学院について書こう書こうとしているが、どうにも筆が進まない。しかしせめて記録的なものだけでも入れておかないともったいないと思い、まずは履修している授業についての記録を。
リンク先を見れば先生のフルネームがわかるので伏せ字にする意味がないかもしれないが、まあ気持ちだけでもということで。

■一学期(4月〜6月)
火曜:7/8限(18:20〜21:00) カウンセリング心理学(必修) T上先生
授業概要 : カウンセリングの定義と働きを明らかにするとともに、カウンセラーの職業倫理などを取り上げて、カウンセラーの態度と行動について検討する。

木曜:7/8限(18:20〜21:00) カウンセリング基礎演習(必修) T中先生
授業概要 : カウンセリングのプロセスについて,実際的な留意点を解説する。並行して,カウンセリングに必要とされる技術について,演習を通して理解を深める。

金曜:7/8限(18:20〜21:00) カウンセリング研究法(必修)O川先生、H口先生、Y川先生
授業概要:カウンセリング心理学における代表的な研究方法として,事例研究法,心理検査法,調査研究法を取り上げ,方法論の理論と具体的な適用について概説する.

土曜:4/5限(13:45〜16:25) 心理・教育統計法 Y川先生
授業概要: 社会科学における統計学の用い方の基礎を解説する。本講義は,「社会調査法」「データ解析法」「調査研究法演習」履修のための基本要件である。

   6/7限(16:35〜19:25) グループプロセス I隈先生
授業概要 :グループを対象としたカウンセリング、援助者グループによる活動について、講義と実習を行う。グループのプロセスに焦点をあてながら、参加者の変容について体験的に学習するよう授業を進める。

■二学期(9月〜11月)
火曜:7/8限(18:20〜21:00) 人格心理学 K井先生
授業概要:人格の構造と形成に関する諸理論を概観し,映像資料なども用いながら,カウンセリング・心理療法との関連について論述する。

木曜:7/8限(18:20〜21:00) 心理・教育アセスメント O川先生
授業概要:心理臨床場面においては、まず、問題となる心理・行動を明確にした上で、その原因を探り、解決への糸口を探っていく。この一連の過程の中で、重要な役割を担っているのが心理・教育アセスメントである。
本講義においては、知能検査、性格検査等の心理検査を中心にその理論的背景、実施法、採点法、解釈および活用の方法について学んでいく。

金曜:7/8限(18:20〜21:00) 実験研究法演習/事例研究法演習 H口先生他
授業概要(事例研究法):1学期のカウンセリング研究法の事例研究に引き続き,カウンセリング心理学における事例研究について,特に行動療法などでよく用いられる単一事例実験計画法に焦点をあて具体的な研究例を見ながら理解を深める.後半では,仮説生成的質的研究方法として近年注目されている修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチについて,理論と実際の適用例を紹介する.

土曜:2/3限(10:20〜13:00)※実際は9:30〜13:30 社会調査法 M井先生
授業概要 : 社会調査のスキル習得のために実習を行う。グループで小規模な調査を行い、データ解析を体験する。本講義は、原則として「心理・教育統計法」を受講済みであることを基本要件とする。

   4/5限(13:45〜16:25) 職業心理学 O田先生
授業概要 :キャリア・カウンセリングの基礎としての「職業心理学」を概説し、その理論的背景であるキャリア関連の諸理論・アプローチを紹介する。さらに実際のキャリア・インタビューを通じて、諸理論・アプローチの現実への応用について考察し、キャリア・カウンセラーに必要な基礎的能力の理解を深める。

■夏休み 集中講義
「カウンセリング基礎論? 比較発達行動学入門」
「カウンセリング特講? キャリア・ストレスとワーク・ライフ・バランス」

キャリア・コンサルタントが国家資格化されるらしい

キャリア・コンサルの国家資格創設へ 能力向上めざす(asahi.com:2007/10/26)

 厚生労働省は25日、職業選択や能力開発に関する相談に応じるキャリア・コンサルタントの国家資格を創設する方針を固めた。同様な民間資格が乱立し、資格取得者の能力格差が問題になっていることから、質の向上を図る狙いがある。

 厚労省は、職業能力開発促進法に基づく国家資格である「技能検定」の一つに「キャリア・コンサルティング」を追加。上級者向けの1級と、中級者向けの2級を設け、国が指定する民間機関が実施する。1回目の試験は来年度中に行われる予定だ。

 政府は01年、失業対策として、キャリア・コンサルタントを5年間で5万人育成する方針を決定。厚労省が一定基準を満たす民間の育成機関に助成金を出して後押ししている。こうした機関が認定する民間資格の取得者は、06年度末現在で約4万3000人に上る。

 ところが、民間資格が10種類以上乱立し、資格認定機関も公益法人から株式会社まで様々。なかには講座を数日間受けただけで取得できるものもあり、資格取得者に相談した人から「初心者であることは明らかだ」などと批判も上がっている。

 政府は来年度、若者や母子家庭の母らの就職を支援する「ジョブ・カード制度」の一環で、キャリア・コンサルタントによる無料相談を始める予定で、コンサルタントの質の向上を急いでいる。

4月に出ていた厚労省の「キャリア・コンサルティング研究会報告書発表」を見ていると「実践力のあるキャリア・コンサルタント資格を明確化する仕組みについて検討し、具体的に整備する必要がある」という一文があるので、まあこういう形できたか、という感じ。
知り合いから「ハローワークにいたキャリアカウンセラーの人に相談したら、話はちっとも聞いてくれないしお説教するしで、全然カウンセリングじゃなかった」という話を耳にしたりもしていて、質の問題は深刻だと感じていたので、動きとしては歓迎だが、既に資格を取ってしまっている「困ったカウンセラー」の人たちに対しては一体どうするつもりなのだろう。

10/30追記:
日本マンパワーがこの件についてコメントを出していた模様。
キャリア・コンサルタントの国家資格化報道に関して(2007/10/26)

報道をうけ、すぐにキャリア・コンサルタント能力評価試験団体が加盟している、キャリアコンサルティング協議会様、およびCDA資格を認定しています日本キャリア開発協会様に問合せましたところ、以下のようなお答えでした。

 【キャリアコンサルティング協議会様のお答え】
「これまでの動向の中で技能検定の動きがあった事は認識していましたが、記事内容以上のことは把握しておりません。」という回答でした。それ以上の詳しいお話は一切されませんでした。

【日本キャリア開発協会様のお答え】
「技能検定に関して検討がなされていたことは事実だが、まだ何も決定している事はありません」というお答えで基本的に協議会様のお答えと同じでしたが、今後この動きがCDA資格そのものに直接影響することはないとのコメントもいただきました。

10/30追記2:
asahi.comの記事「〈歩き続ける女たち:2〉「うそ」つく仕事に疲弊」。キャリアカウンセラーの女性を紹介する記事だが、その末尾に渡辺三枝子先生のこんなコメントがあったことを思い出したのでメモ。

 渡辺三枝子・筑波大特任教授の話 この10年の雇用環境の激変は、個々人の職業人としての生き方を大きく変えた。職場の先輩はモデルとして役に立たなくなりつつある。プロによる支援が今後ますます必要になるだろう。

 にもかかわらずキャリアカウンセリングをめぐる状況は混乱している。政府は01年、5年間で5万人のコンサルタント養成をうたった。厚生労働省が助成する資格試験だけで10種類あり、資格取得者は激増したが質のばらつきは深刻だ。資格を得ても就職口がない不満もある。人数をただ増やすより、いま相談業務をしている人を教育し、質を高めることが先決だ。

私が2001年に養成講座を受けた時、渡辺先生の講義を直接受ける機会があったが、「5万人という数字だけが一人歩きして困っている」とその頃既におっしゃっていた。きっとずっと言い続けてこられたことなのだろう。