滋賀医科大が臨床心理士育成支援プログラム

Yahooニュース経由京都新聞
どちらもすぐに記事が消えるので、とりあえず全文メモ。

臨床心理士へ「支援講座」 滋賀医大、来年以降枠拡大へ京都新聞:2007/12/16)

 滋賀医科大(大津市)は本年度から、大学で心理学を学んだにもかかわらず、他の業種に就業した社会人やフリーター向けに、臨床心理学の研修講座を開講している。仕事や人間関係に悩む人が増え、子どもの犯罪などが社会問題となる中、基礎知識を持つ人に医学的な技術を身につけてもらい、近年需要が増している臨床心理士育成を促す。

 医療機関児童相談所、学校や企業などで臨床心理士の需要は増える一方だが、大学や大学院で心理学を専攻しながら、実務経験の乏しさから自信を持てず、専門性を生かした就業をしない人も多い。臨床心理士になるには、臨床の経験や資格試験の受験が必要で、幅広い専門知識が要求される。

 同大学では、精神疾患や小児疾患などの心理検査心理療法、患者や家族らに向けた心理教育、生活技能訓練などさまざまな分野で通用する技術を学ぶプログラムを提供し、受講者に臨床心理の現場への復帰や進出を促す。

 指導には、精神医学講座の山田尚登教授のほか助手、臨床心理士2人があたる。5カ月間で64日講義し、終了後は修了証を授与する。
 3年計画の最初になる本年度は10月に開講し、3人を受け入れた。いずれもスクールカウンセラー心療内科での勤務経験があるが、2人は現場を離れている。来年、再来年は枠を拡大し、10人程度の受講生を募る意向だ。山田教授は「今年の募集に際し、主婦らから10人以上の問い合わせがあり、潜在的な要求が高いことが分かった」としている。

「実務経験の乏しさから自信を持てず、専門性を生かした就業をしない」と言うよりは、専門性を活かした「食べられる」仕事が「少ない」のではないのかと言う気がするのだが。

とは言えこういう形で医療分野が臨床心理士の育成に取り組んでくれるのはいいことだと感じる。
以前ロテ職人さんのところの記事鳥取大学医学部大学院が臨床心理士養成課程を設置するということを知り、いい流れだと思った。
ロテ職人さんが紹介されていた鳥取大学副学長の記事をここで引用しておく。

活躍広がる臨床心理士 こころの時代新たな展開へ山陰中央新報:2007/06/19)

 臨床心理学コースは教育学研究科、心理学研究科、人間科学研究科など文系大学院に設置されている。医学部研究科(大学院)に設置されるのは鳥取大学が初めてであり、関係者の間では既に話題となっている。医学部に設置された臨床心理士コースの特徴、それは、付属病院、特に精神神経医学領域との連携。<こころの変調>や<病気>に苦しむ患者のカウンセリングに関しては十分な経験が積まれる。認知症の診断は臨床心理士の本来的業務、と言っていい。

 逆に、細分化、専門性の進む医学・医療にあって、全人的医療人育成にも効果的。医学・医療を基盤とした臨床心理学の新たな展開が始まろうとしている。

 八月には鳥取大学医学部臨床心理士コース(修士課程、定員五人)の入学試験が実施される。優秀で意欲ある学生が集まることを期待している。

 鳥取大学付属病院では「脳とこころのセンター」設置構想がある。<こころの変調>を来した人が必要としているのは医療か、カウンセリングなのか、その鑑別段階から、鳥取大学医学部で養成された臨床心理士が力量を発揮することであろう。

おそらく今後はますますこころとからだを総合的に扱える人材が求められていくと思う。そういう人材を育成するのに、医学部発の養成講座に期待したい。

「キャリアカウンセラー国家資格化」報道のその後

朝日新聞での報道後しばらく経過してから、厚労省の該当すると思われる報告書が公開された。

「キャリア・コンサルタント制度のあり方に関する検討会」報告書〜統一的なキャリア・コンサルタント制度の構築と更なる専門性向上に向けて〜厚生労働省:2007/11/16)

この中でいわゆる「国家資格化」に触れていると思われる箇所は下記。(報告書の7ページ)

キャリア・コンサルタント試験の統一のあり方については、近年、資格制度等の規制緩和が進められる中で、参入規制を伴う業務独占資格のような制度とすることは困難であり、かつ性格的にもふさわしくないと思われる。キャリア・コンサルタントのレベルアップと試験の統一を図ることを目的とするのであれば、例えば、技能検定のような、一定の能力水準にあることを公証するシステムを用いることが考えられる。
技能検定制度については、近年、都道府県実施方式から民間の指定試験機関実施方式に移行しつつあり、また職種についても、従来のものづくり等から、ファイナンシャル・プランニング技能士など、サービス・情報関係も含まれるようになる等幅広い能力評価制度として展開しつつある。したがって、キャリア・コンサルタントの統一試験を技能検定制度に乗せていくことは無理のない方策であり、特にファイナンシャル・プランニング技能士の制度は、キャリア・コンサルタント試験の設計に当たり参考とすることができよう。

技能検定をプラットフォームとしてキャリア・コンサルタント試験を統一化しようとしている、というのが書かれていることであり、「国家資格化」というのは誤解を招く表現ではないかと思う。
ファイナンシャル・プランニング技能検定についてはこちら

この報告書はキャリア・コンサルタントの現状問題点や今後目指すべき方向など、非常に重要なことが書かれているので、キャリア・コンサルタントの方々は一度は目を通すべきだろう。

こちらに書かれている問題点は以下の通り。

しかしながら、現在のキャリア・コンサルタント養成の状況を見ると、前述したように、次のような点で、専門職としての水準に、いろいろなレベルが混在しているのが実態である。
1. キャリア・コンサルタントの能力水準にバラツキが大きく、養成機関による養成を修了した者であっても、自ら「力量不足」を感じていたり、指導者やクライアントから、「説教調で意見を押しつけられる」、「クライアントやキャリア・コンサルティングに偏った固定観念を持っている」、「話を聞くだけに終始する」等の指摘がなされることも少なくない。
2. 専門職としての使命感や倫理性を十分備えるに至っておらず、制度的にも、これを担保する仕組みが十分には整備されていない。
3. 専門性についてこれを自覚し、自ら研鑽し高めようとする意識が希薄な者も多く、また、これを高めるための指導を受ける機会や環境が十分には整えられていない。
このように、キャリア・コンサルタントの現状と専門職としてのあり方との間に未だ大きな乖離がある一方で、キャリア支援政策の必要性の高まりや、底上げ戦略の中心となるジョブ・カード制度の展開などに応じて、キャリア・コンサルタント制度を実際に機能する仕組みとすることが喫緊の課題となっている。

また資料編7ページに「非熟練者の限界・壁」の指標をこのように挙げている。

・相手の言いたいことをきちんと受け止め、相手が聞きたいと思っていることにきちんと答えることができるかどうか。
・自分のキャリア・コンサルティングのパターンに勝手に当てはめてしまわないかどうか
・クライアントに「役に立った」と言われて満足し、そこで留まってしまわないかどうか(その先において、クライアントが行動レベルで変化しているかどうかを確認できるかどうか)。
・時間管理を適切に行うことができ、クライアントとの信頼関係の構築ができるかどうか。
・情報収集や教えることが得意で好きな場合でも、情報や教育に偏らない関わりができるかどうか。
・現場での体験に頼ってしまわないかどうか(現場感覚と知識・理論のバランスを取れるかどうか)。
・専門知識や教育があっても、説教調で「こうした方が良い」など自分の意見だけを押しつけることがないかどうか。
・クライアントあるいはキャリア・コンサルティングに対し、偏った固定観念を持っていないかどうか。
・意味もなくアセスメントを始めていないかどうか(道具の位置づけを自覚しているかどうか)。
・自信過剰で、何でもできると思っていないかどうか(全能感がないかどうか)。

この指標で行くと、正直現状は「非熟練者」と言わざるを得ないキャリア・コンサルタントが非常に多い気がする。一体これをどうしていくつもりなのか。

参考リンク
キャリアコンサルタントの技能検定EU労働法政策雑記帳:2007/11/20)

キャリアの問題は労務屋さんの入っているキャリアデザイン学会とかもあるように、大変学際的というか、いろんな分野が絡み合っているところですから、心理学的側面に偏らず、広く法学、経済学、経営学社会学なども学んで欲しいと思います。