人権宣言集


人権宣言集 (岩波文庫 白 1-1)

人権宣言集 (岩波文庫 白 1-1)


 Twitterなんぞをやっておりますと、時事問題なんかに頻繁にコメントなぞつけるようになりまして、人権がどうのこうの、などという話題にそこそこの頻度で首を突っ込むことになります。
 しかしその割に、たとえば人権宣言、みたいなものをちゃんと読んだ事もなかったなぁと思い、ちょっと手に取ってみた次第。


 まぁ、ほとんどが人権を規定した法律の条文ですから、読んでいて大きく興奮したり盛り上がったりという事はあまりないわけですけれども。とはいえ、それなりに色々と認識を改めたりしました。
 一口に人権と言っても、最初に重要視されたのはもっぱら自由権で、生存権についての規定が整い出したのはかなり最近であるとか。


 あと、刊行された時代性みたいなものなんでしょうけど、ソ連や東欧など旧共産圏の人権宣言がかなり大きく扱われてて、なんとなくこういう空気感だったのか、みたいな事を体験するにも良い読書でした。今、平成生まれの子とかだと、逆に共産圏ってイメージするよすがが全然無い、とかいう事もありそうですよな。


 個人的な一番の関心事は、いわゆる天賦人権説についてでした。要するに誰もが認める原理から、演繹的に「人は生まれながらにして不可侵の権利を持つ」という真理が導かれるのだろうか、そうだとしたらどのような論理でか、といったところでした。
 しかし諸々の人権宣言を読んでみて分かったのは、そうした演繹的な論理で出て来た話じゃなさそうだ、という事で。むしろ、「そうだと認めないと大体悲惨な事になるから」という、経験則としてそう定めたという側面が強いようだというところ。
 まぁ、人類史上最大の経験則、なのかもしれません。
 そうだとすれば、我々一般庶民がこうして平和に暮らせている、その暮らしを保障する論理って思ってた以上に危うい薄氷の上にあるのだな、と改めて思わされて、若干背筋が寒くなったりもしました。いやはや、よくぞ人類は世の中をここまで持ってきてくれたものです、お蔭で私も日々のんびりと読書しながら過ごすことができる……。


 まぁ、あれです。なんだかんだ、我々の生活の根幹になっている法律とか精神とか、一通り見ておくと色々考えたりするわけで、たまには良いのかなぁと。そんなような。