Spivak,Gayatri Chakravorty 1942年カルカッタ生まれ。カルカッタ大学卒業後、アメリカに留学。現在、コロンビア大学アヴァロン財団人文学教授。 著書に「ポストコロニアル理性批判」(ASIN:4901477064)「サバルタンは語ることができるか」(ASIN:4622050315)など。
#metoo運動の着火点となった、ハーヴェイ・ワインスタイン事件をめぐる、ニューヨーク・タイムズ記者と女性たちの苦闘の物語。 見ている最中は、観ているこちらもグルグルと色々な苦悩が内面に駆け巡っていたが、バシッと霧が晴れた瞬間が見えた。 自分自身に果たせる固有の役割というものが見えた瞬間があったのだ。 それについては最後に改めて述べる。 見ている最中にどんな苦悶が駆け巡ったかを、整理しよう。 ・#metoo運動当時の自分の回想 かつての職場(おっさんたちが支配していた)のハラスメント環境を再認識し、ツイートして、少し気持ちが晴れた記憶がある(必要なら、別の機会にいずれ詳説するかもしれない)。 …
ガヤトリ・C・スピヴァクを読んでみたいなと思ったので、とりあえず一番薄そうな『ナショナリズムと想像力』を買ってみた。ブルガリアのソフィア大学における講義が2010年に書籍化したものだ。巻末には聴衆との質疑応答も収録されている。 ナショナリズムと想像力 作者:ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク 青土社 Amazon 二つの「想像力」 ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァクはインドのコルカタ(カルカッタ)生まれ。文芸評論、比較文学、ポストコロニアル批評、フェミニズム批評の大家で、現在はコロンビア大学で教えている。またデリダの主著『グラマトロジーについて』の英訳者としても有名。この講演録は大…
「主体効果subject-effects 」という人間の普遍的傾向が、ポリティカルコレクトネスというタテマエを呼び、サバルタンの潜在化という普遍的悲劇を起こすのでは、という明確な問いを僕は抱いています。 我々は油断するとsubject-effects に囚われてしまい、「水底」(ポリコレ的表層の奥)に潜むサバルタンの声を忘れてしまう。それを聴くことができるのは、パレーシアという率直さと素直さかなあという答えが、今のところの僕の到達点です。 スピヴァクが批判するフーコーが、subject-effectsに囚われつつ最晩年にパレーシアに辿り着いたことも皮肉ですね。 ※ スピヴァクは『サバルタンは語…
2022年くらい? に英文学の修士課程に行っていた人に、「思想史や哲学を文学に応用しているのをよく見かけますけど、何から読んだらいいのかわからないんですよねぇ」などと話していたら、いくつか参考文献を教えてもらった。 その中にあったのが、内田樹の『寝ながら学べる構造主義』と千葉雅也の『現代思想入門』だった。 今回、内田樹の『寝ながら学べる構造主義』を読もうと思ったのは、ガヤトリ・C・スピヴァクの『サバルタンは語ることができない』を読んでいたからで、そしてスピヴァクを読まねばならないと思ったのは、アルジェリアの女流作家についての卒業論文をXのフォロワーにいただいたからだった。 スピヴァクが言ってい…
スピヴァクの『サバルタンは語ることができるか』は届き、一読したのですが。 ダメです。どうしようもありません。どうダメなのか書くと論文一本分の文章が必要になってしまうのでまたの機会にですが、買って損しました。 締め切りが近いので、私の論文のほうを優先することにします。
『サバルタンは語ることができるか』での結論に、新たに修正が加えられているようです。AMAZONを見たら5ケタ越えなので、買わずに国会図書館で読むことになりますが。 現在の私の意見は 「サバルタンは語ることができる。自称知識人がでしゃばらなければ」 です。スピヴァク自身も気づいたようですが、「サバルタンは語ることができない」という意見自体がすでに抑圧的、上から目線なのです。『80日間世界一周』でサティにされかけてたヒロインのアウダだって、「救っていただいて感謝します」ぐらいのことは語っています。それが本音とは限らないし、もしかしたら英国紳士の妻という地位を得て文明社会に食い込むための戦術でさえあ…
サッティー(昔のインドで、夫に先立たれた妻を殉死させる風習)から英国人主人公がヒロインを救出するくだりまでだけ読むつもりだったのですが、勢いにまかせて約80分で世界一周につきあってしまいました。やはり傑作です。リアルに涙が出てきました。 もちろん、批判も多々あることは承知しています。 「日本の物語では神仏が危機を救うが、西洋の小説では金銭が危機を救う」 といった論が明治時代にもあったそうです。確かに、80日間世界一周の賭けに応じたフォッグは、まだ前金も入ってないのに、出所の定かでない金を湯水のように使い、執拗に追ってくる探偵や数々のアクシデントを退けて進んでいきます。 そもそも80日間世界一周…
うかつにも、これまで現物を読んだことがありませんでした。名前はしょっちゅう目にしていたのですが、「知識人がサバルタン(従属者)を代理して語るのは越権だ」みたいな主張だろうと思い、それに反発を感じて読まずにきたわけです。 今回書く論文は、明治時代の東京在住の新聞小説家二人がアイヌ社会を描くという、まさに越権な小説についてです。賛否は別として、スピヴァクぐらいは読んでないと議論が始まらないようです。 しかしなあ、明治時代の実例を挙げますと、鉱山に坑夫となって実体験した人が、ぶじ生還して雑誌『日本人』でその悲惨な実態を明らかにした、なんて例もあるわけです(高島炭鉱事件 一八八八)。そこまで覚悟のある…
私事で恐縮ですが…… SFのテーマとしての植民地 シンガポールで見る007の衝撃 創作紹介 関連ブックガイド 私事で恐縮ですが…… Winsland House II 今回は私事と雑談なんですが、実は一昨年あたりからブログのほかに趣味でSF小説を書いておりまして、WEBメディアのコンテストに応募したりしています。 昨年はバゴプラ/Kaguya Planet主催の「第3回かぐやSFコンテスト(特集・未来のスポーツ)」 にて選外佳作に選んでいただいたりもし、細々と楽しく活動しております。 Kaguya Planetについてはこちらの記事をどうぞ。作品へのリンクもあります。 pikabia.hate…
しばらく日記が書けなかった。ずっと神経が昂っていて落ち着かない。わたしにはわからないのでと言いたくないから本屋へ行って本を買うけど、自分が本を読める状態にあるかというとそうでもない。 2023年10月26日 くぼたのぞみ/斎藤真理子「曇る眼鏡を拭きながら」とファン・ジョンウン「百の影」を買う。 2023年10月29日 神保町で本を見た後、三鷹に移動。太宰治の墓参りへ。前回の墓参りからもう5年経つのか。何となく気になっていたので再訪できて嬉しい。 23時を過ぎた頃、俺は今から豚汁を作るぜと大鍋を引っ張り出して調理を始める恋人。何か手伝うことある?と聞いたら、踊るといいよと言われたので少し踊った後…
ヘビー級5分5R。アウメイダ9位、ルイス10位。 UFCデビューから5連続フィニッシュ勝利でランキング一桁まで上がってきたアウメイダ。本来ライトヘビー級の体格だが、スーパーヘビー級の相手をテイクダウンからコントロールしてフィニッシュしてきている。ただ、ヘビー級は下位ランカークラスでもトップとは実力的に大きな開きがあり、このままタイトル戦線まで上がっていけるかはまだ未知数。今回、ランキング5位でヘビー級ではJJを除くとトップクラスのレスラーであるカーティス・ブレイズ戦で真価が問われるところだったが、ブレイズが欠場し、ルイス戦に変更。32歳。 ブラックビースト・ルイスはひたすらぶん殴る喧嘩屋スタイ…
【2023年11月1日 大幅に追記・更新】 膨大な動画数を誇るAmazonプライムビデオ……その中からベッドシーンや濡れ場を中心に、おっぱい(乳首)が見える映画を紹介します。
展覧会『堀聖史「スタート、ストップ、メモリー」』を鑑賞しての備忘録HIGURE 17-15 casにて、2023年10月3日~21日。 人や生きもの、植物などのモティーフが綯い交ぜとなった混沌としたイメージの絵画11点に加え、ギターやハープのオブジェが置かれた、堀聖史の個展。 《人形》では、画面左端に手足を縛られたクリーム色の人形――ジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico)の絵画に繰り返し表わされたような――が失神したような状態で表わされている。その頭部からは噴水のように液体らしきものが噴き出している。朱色の肌を持つためギリシャの赤像式陶器を想わせる、古代の図像から飛び出…
Feminist Perspectives on Power First published Wed Oct 19, 2005; substantive revision Thu Oct 28, 2021Feminist Perspectives on Power (Stanford Encyclopedia of Philosophy)仮訳する。 権力に対するフェミニストの視点 2005年10月19日(水)初版発行、2021年10月28日(木)大幅改訂 フェミニズムの一般的な定義が議論の的となることは間違いないだろうが、フェミニズム理論における多くの仕事が、ジェンダーによる従属を批判し、人種…
10年くらい昔の話、「世界文学」というタームが界隈で地味な流行の兆しを見せていた(?)とき、当時の私は「翻訳」とか「越境」とかそういった問題系にあまり興味がなかったので、「またなにかメリケンから思想の黒船が来とるワ、開国シテクダサイ」と斜に構えてスルーしていた。無知ゆえの頑迷は恥ずべきものと認めるが、そうした態度を決めるに至ったもうひとつの理由として、当時受けていた授業でアメリカ文学の先生が「アメリカは移民が多く、彼らが英語で自身の文化、ルーツを表現するようになっているので、今のアメリカ文学を読むことで世界を知ることができる」という趣旨の発言をしていて、なるほどここでいう「世界」とはそういうも…
ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理 作者:ケイト・マン,Kate Manne 慶應義塾大学出版会 Amazon ケイト・マン『ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理』小川芳範訳、勁草書房、2019年〔原著:Manne, K. (2017). Down Girl: The Logic of Misogyny. Oxford University Press.〕