アレクサンドル・イサーエヴィチ・ソルジェニツィン(1918 - 2008)。 高校高学年のころ、ソルジェニツィン作品が翻訳刊行され始めた。『イワン・デニソビッチの一日』が代表作とされた。大学に入学した年に最初の長篇翻訳『ガン病棟』が刊行された。「二十世紀のドストエフスキー」という出版社の謳い文句に、わけもなく心躍った。理解及ばぬままに、むさぼり読んだ。だいぶ読み進めてから、コストグロートフという男がふいに現れ、病院の入口を通過する。つまり主人公がなかなか登場しない。なるほどドストエフスキーだ、と思った。 一九七〇年にはノーベル文学賞を受賞した。まさに時の人で、翻訳書も次つぎ刊行されていった。 …