金原ひとみの「マザーズ」を読んだ。 文庫にして600ページ超の長編。かなり読んだと思ったのに20%も進んでいないと知った時、この小説は「すげー長い」と思った。40%くらいの時点では「なんかずっと同じこと書いてる」と思った。50%まで進むと引き返せなくなった。最後まで引き込まれてこの長さには意味があると思った。三人の母親たちの地獄に親しんでいくには必要な時間がある。 2歳の女の子の母のユカは夫と別居している。シッターや家事代行を利用しながら小説家としての仕事をこなしているが次第にバランスを失っていく。ユカの高校の同級生の涼子は9ヶ月の男の子の母親で専業主婦だ。密室での育児に限界を感じ、認可外の保…