現代日本を代表する美術家。その活動は絵画、造形建築の広範囲にわたっている。美術批評家、社会文化批評家としても活躍している。 第12回パリ・ビエンナーレ(パリ、1982年)、ユーロパリア89現代日本美術展(ゲント)、第 9回インド・トリエンナーレ(ニューデリー、1997年)などに出品してアーチストとして世界的に知られる。 最近は近自然公園『日回り舞台』(2000年)を発表。著作に『ルネサンスー経験の条件』(筑摩書房)ISBN:4480873279 など多数。
『芸術の設計 見る/作ることのアプリケーション』 岡崎乾二郎 https://amzn.to/45Cju3q 作品を作るだけではなく、批評もする、ある意味で圧倒的な存在で、独特な人が岡崎乾二郎で、どこか近寄りがたい存在でもあった。 この本も、以前から、そういえば図書館の棚にずっとあって、その背表紙は見ていたが、何か寄せ付けない気配を漂わせていたように思い、敬遠していたのかもしれない。読んで、確かにその予感ははずれてはいなかったのは分かった。厳密すぎて、それは、すごいけど、恐さもやっぱりあった。 その中で、自分が印象に残った言葉がある。自分が部分だけを抜き出すのは、もしかしたら正確性を欠くかもし…
MOTコレクション。特集展示||岡崎乾二郎。前期2009.10.31~2010.1.24 後期2010.1.26~2010.4.11。東京都現代美術館。 2010年4月1日。 常設展は、特集展示を行うようになって、より充実した鑑賞ができるようになったと思う。 それは、企画する側としては、かなり大変なことだと思うのだけど、今回も、なかなかまとめて見る機会がなかった岡崎乾二郎というアーティストの作品を見ることができたのは、ありがたかった。 作品を作り、さらに評論も行えて、明らかに頭がいいように思える岡崎は、どこか近寄り難い印象もあるが、独特の存在であって、そして作品も、ものすごく長いタイトルがつけ…
モネと写真のつながりを知ったのは、松浦先生からだった。 十何年前、ムサビ学生課下の大教室で、先生は全学科生に向けて美学の講義をしていた。仲間内の情報交換でめっぽう面白いのは103だと聞いてから、単位の申請はしないまま木曜日は一号館に通うようになった。 松浦先生の授業はまじに実りがあった。とくにモネとファインダーの話は、写真をやっていた私に刺さり、今もまだ刺さったままだ。 それはモネの連作のことだった。モネは睡蓮を250、積み藁を25以上描いていて、ルーアン大聖堂もだけど、同じ対象を描き続けた。そして、ほとんど同じ構図、あるいは少しだけ右にずれた構図など、風景を前にあたかもカメラのファインダーで…
毎週日曜日は、この一週間(4/1~4/7)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 4/14 号 2 冊父の革命日誌 チョン・ジア 河出書房新社 2,310キャラメル工場から 佐多稲子傑作短篇集 佐久間文子 ちくま文庫 968 ◆女性自身「今週の本」: 4/16 号 4 冊鼓動 葉真中顕 光文社 1,870ひつじが丘 三浦綾子 講談社文庫 770方舟を燃…
東京の上野にある国立西洋美術館に行ってきた。目的は企画展の「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」を見ること。当館初の現代美術展ということで前々から気になっていた。展覧会のコンセプトとしては現代美術家は西洋美術館をどう見ている/見ていたのか。 その感想と備忘録。あと点数付け(わかりやすい!) ①中林忠良 73点 当館エピソードを抜いて導入は版画から。腐蝕の過程そのものを作品にしてた。長谷川潔を稲沢の荻須美術館で見た時超絶技巧ですごいと思ったがそういう版画ではなく、やや神秘性を感じるタイプ。ルドンなどが置かれていたのもなんか納得。 概観も含めて導入としてはよかったと思う。 ②…
エミリーは昆虫の標本のあいだで三本のにんじんのスティックを食べながら、キチン質の昆虫の表皮を愛でた。キチンは哺乳類の生理機能にはなかった。もっとも、人の死後、まだ腐敗が始まらないうちに皮膚が革のように硬くなり——それがキチン状と呼ばれる——その硬さはある甲虫に似ているということを本で読んだ。その甲虫は腐敗していく仲間の死骸を食べながら脱糞し、死骸を堆肥に変えていく。虫の糞の使い道はたくさんあった。もっとも喜ばしいものはマナだ。エミリーは、イスラエルの民を砂漠へと率いていくモーゼの物語が好きだった。昆虫たちが彼らを救いにやってくる。もちろんマナは、「出エジプト記」によれば、大地の恵みの霜で、蜜の…
朝から雨がざぶざぶ降っている。駅前の横断歩道のすぐ脇の低い街灯の上に濡れたカラスが留まっていて、どこかビルの上にいるらしいカラスと同じメロディで鳴き交わし合っている。シネ・リーブル神戸でタル・ベーラ(アサイヤスや黒沢清や鳥山明や岡崎乾二郎などと同じ1955年生れ)の『ヴェルクマイスター・ハーモニー』を見る。あまりにもセンチメンタル過ぎるのではないか!と驚かされもするが、いい映画だった。ランシエールは『平等の方法』の中で、「こんな光、こんな動き、こんな速度で物体や場所がフィルムに収められたことは一度もなかったろうという気持ちにさせられる瞬間もあります」と、映画ならではの喜びを具体的な数本のタイト…
毎週日曜日は、この一週間(2/26~3/3)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 3/10 号 2 冊ビル・エヴァンス 孤高のジャズ・ピアニスト 河出書房新社編 河出書房新社 2,420なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた 養老孟司 中央公論新社 1,540 ③ ◆女性自身「今週の本」: 3/12 号 4 冊風に立つ 柚木裕子 中央公論新社 …
TSCAに行ってきた。 天王洲橋からの景色。早朝まで雨が降っている音が聞こえていたので今日も雨かと思いきや、日中はまるっと晴れ渡っていた。TSCAに行くときはかならず雨の日だったが、今日はついに濡れずにギャラリーに行けた。 岡崎乾二郎の小さな展覧会を見てきた。会場はTSCAのプライベートスペースに展示があって、ちょうど私だけしか予約をいれてない時間帯だったみたいで他に人がいなくて、ギャラリーのオーナー(だと思うが間違っていたら申し訳ないです)の染谷氏にありがたくもいろいろお話を聞かせてもらいながらの贅沢な鑑賞となった。 2/22の猫の日から開始された展覧会らしく猫の作品ばかりが展示してあった。…
レジで代金を払った人々が、手に盆を持ったままくるりとこちらに向きを変える。そうして、目で空席を捜す。代金を払い終り、テーブルに向かって歩き始める前の、その一瞬の無の時間。そのとき彼らは何者でもなく、彼らの仕事も役職も消えうせて、ただプラスティックの盆の上にゼリーをのせたまま、馬鹿みたいにつっ立っている。次にどうすべきかを、決めかねているかのように。 (サム・シェパード/畑中佳樹・訳『モーテル・クロニクルズ』 p.205) アラームで9時起床。10時から会議なのでひさしぶりに早起き。だるい。だるいが、来週からはもっと早起きする必要のある生活がはじまる。クソ喰らえだ。はやく夏休みになってほしい。時…
MRTR氏のブログの2/11の記事で中平卓馬展をやっているというのを見かけていたので、昼過ぎに見に行こうかなと近代美術館のサイトを調べたら、カタログ刊行が3月とあったので止めにした。去年の挑発関係のときもカタログが遅れてたけど、展覧会の開会に間に合わないってちょっと意味がわからんな。 けっきょく行こう行こうと思いつつ行けてなかった千葉市美術館の鳥文斎栄之展を見にいった。千葉駅で降りたのははじめてからもしれない。駅前の通りはひろびろしていたが、風の通りが強くて今年一番で寒かった。栄之展はめちゃくちゃ面白かった。コピペみたいなのっぺり顔ばっかりなのに着物の流れるようなラインの美しさでみんな美人に見…
一年という時間は、その体感があっという間であったとしても、いざ思い返してみれば気後れするほどの膨大な出来事の積み重なりである。昨年、乃木坂46(以下、乃木坂)の1期生全員がグループでの活動を終え、その直後に早川の騒動があり、私は夏に新体制のライブを見に行った。時系列は前後するが、ハロプロの25周年ライブや、中森明菜の映画にも足を運び、乃木坂に限らず、「アイドル」について縦軸と横軸に多少の広がりを持って考えることがしばしばあった。 その意味では、2023年は特別な年という感じはなくとも、ぐるぐると頭の中にうずまくものが多かった一年のように思う。今回のブログでは、いくつかのトピックについて自分なり…
東京京橋の南天子画廊で岡崎乾二郎展「頭のうえを何かが」が開かれた(12月23日まで)。これは出版記念展と題されていて、『頭のうえを何かが』(ナナロク社)という岡崎乾二郎の新刊出版に合わせた個展だった。 画廊に展示されている絵を見て驚いた。ほとんど幼児の描いたような稚拙な絵に見える。『頭のうえを何かが』を購入して帰宅してじっくり見た。岡崎が最近描いた作品の画集になっていて、南天子画廊ではその原画を並べていた。 岡崎は2021年10月30日の夜、突然指がもつれ、腕から力が抜け、右手右足が動かなくなり、椅子からずり落ちるように床に横たわった。奥さんが救急車を呼び救急病院に入院した。その時もう右半身は…
パソコンがぶっ壊れた。いろいろ調べたがどうもSSDがクラッシュしたっぽくて復旧不可能となり、あたらしいPCを購入。前回の反省からクラウドにバックアップをとっていたので、ほぼほぼ元通りの環境にもどった。ブックマークだけが7月時点のもののため、5ヶ月分空白があるがまあ仕方なし。 もう終了してしまっているが先週、南天子画廊で岡崎乾二郎展と山陽道書店で朝吹真理子展を見てきた。岡崎展は筆の動きや色彩や空間の把握が時間経過で元気に?なっていく様が一望できて面白かったが、出版された本をキャプション付きで読むとリハビリの過酷さがよりリアルに感じられるのだった。昔右腕を骨折した時のことを思い出した。 朝吹展はも…
1995年に発行された『批評空間』の臨時増刊号で、現代美術批評の重要文献の翻訳が掲載されいてたことで有名だが、なおかつ、長いこと絶版が続いていて、重要にもかかわらず入手不可能であったためにある意味で「伝説化」もしていた。しかし、今では電子化されているので入手も容易になっている。 何故このタイミングで読んだのかというと、直接的には2023年9月Kindle月替わりセールを眺めて - 殺シ屋鬼司令IIでセール対象品になっているのを知ったから。 一方で、井口壽乃・田中正之・村上博哉『西洋美術の歴史〈8〉20世紀―越境する現代美術』 - logical cypher scape2、ドミニク・マカイヴァ…
概要 私がアート・インクルージョン(Ai)に参加*1したのは2022年8月、インドネシアに行って帰って来てからすぐのことだった。気が付けば1年と3ヶ月、どたばたと目まぐるしく過ぎていった。色々なことがあって、今月15日付で私はパートナー*2ではなくなった。 即興音楽ユニット「NO is...」初参加(2022年10月) もともと、2021年から父(新聞記者)がAiの取材をしていたので、父が取材している場所でその息子が職員として働く、という稀有な状況が出来上がった。私がスタッフ(通所者)のつくりだした作品を撮影してアーカイブをつくっているとき、父が横で同じように作品を撮影していることもあった。こ…