悲しいだけ 欣求浄土 (講談社文芸文庫) 作者:藤枝静男 発売日: 2013/11/29 メディア: Kindle版 藤枝静男の短編「一家団欒」を最初に読んだのは集英社文庫の筒井康隆選『実験小説名作選』というアンソロジーで、死んだ主人公の章が市営バスで郊外の墓地に出かけ、家族が待つ墓下に自ら入り家族と再会するという話。藤枝静男には奇想天外な『田紳有楽』があるように、「一家団欒」もまた一つの幻想譚として読むこともできる。そうした文脈で十分楽しめる話ではあるのだが、それでは終わらせることができない疑問が残った。今回のレビューはその疑問点から出発する形で書いてみたい。 僕はこの話を読んで驚いたことが…