源氏は姫君の様子をくわしく語っていた。 大井の山荘も源氏にとっては愛人の家にすぎないのであるが、 こんなふうにして泊まり込んでいる時もあるので、 ちょっとした菓子、強飯《こわいい》というふうな物くらいを 食べることもあった。 自家の御堂《みどう》とか、 桂《かつら》の院とかへ行って定まった食事はして、 貴人の体面はくずさないが、 そうかといって 並み並みの妾《しょう》の家らしくはして見せず、 ある点までは この家と同化した生活をするような寛大さを示しているのは、 明石に持つ愛情の深さがしからしめるのである。 明石も源氏のその気持ちを尊重して、 出すぎたと思われることはせず、 卑下もしすぎないの…