『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills,1982)は、 カズオ・イシグロの長編デビュー作です。 1982年、王立文学協会ウィニフレッド・ホールトビー賞を受賞しました。 当初『女たちの遠い夏』(1984 ) というタイトルだったことはあまり知られていませんが、 個人的には、こちらのほうが好きだなあと思います。 「女たち」に内包する「母親たち」としての生き様に共感できる部分があるからでしょうか。 幼い頃の日本(長崎)の記憶を作品の中に「保存」しておきたかったという著者が、生まれる前の、みたこともない戦後の日本をみごとに「再現」した作品。英語で書かれたものを和訳されたという逆輸…