序文・犠牲的精神 堀口尚次 稲むらの火は、嘉永7年/安政元年の安政南海地震による津波に際しての出来事をもとにした物語。地震後の津波への警戒と早期避難の重要性、人命救助のための犠牲的精神の発揮を説く。小泉八雲の英語による作品を、中井常蔵が翻訳・再話したもので、文部省の教材公募に入選し、昭和12年から10年間、国定国語教科書に掲載された。防災教材として高く評価されている。 もとになったのは紀伊国広村〈現在の和歌山県有田郡広川町〉での出来事で、主人公・五兵衛のモデルは濱口儀兵衛〈梧陵〉である。村の高台に住む庄屋の五兵衛は、地震の揺れを感じたあと、海水が沖合へ退いていくのを見て津波の来襲に気付く。祭り…