つい先日、こんな本が出た。 現代奇譚集 エニグマをひらいて 作者:鈴木捧 Amazon 処女作『実話怪談 花筐』、第二作『実話怪談 蜃気楼』で独自の淡く、けれど奇妙に忘れがたい怪談世界を提示した鈴木捧氏の第三作である。私は前掲書を再読三読し飽きなかった。玉石混交の実話怪談本の中で、舐めるように読んだものといえば、我妻俊樹氏、朱雀門出氏を筆頭に、鈴木氏の『花筐』『蜃気楼』を挙げるだろう。それほどに、私にとっては特別な意味を持つ作家だ。 この三人の怪談に共通する点がある。「こんな話が怪談になるのか(なるのだ)」というセンス・オブ・ワンダーである。それは「怪談とはこのようなものだ」という固定観念を打…