毎度引用している、北御門二郎さん訳のレフ・トルストイ『文読む月日』(ちくま文庫)の原題は「КРУГ ЧТЕНИЯ(クルーク・チテーニャ 読み物の輪)」という。最も古い訳本は、ロシア文学者・原久一郎さんによる1934年の『一日一善』で、この題名は、1880年代半ば、齢50代後半にさしかかるころ、トルストイが一般の人々の暮らしに役立つ「格言集」を編集しようと思い立った意図を正しく伝えるものとされている。実は、訳本とは異なるが、NHKロシア語講座の講師などを担当されている八島雅彦さんもロシア語学習者向けの抄訳書『ロシア語一日一善』(東洋書店 2008年)という「第三の翻訳」を出している。 その巻末の…