259.『坊っちゃん』日本で一番有名な小説(3)――書出しの1行にすべてがある 『坊っちゃん』の有名な書出し、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。」については前著(『明暗』に向かって)でも少し述べたことがあるが、改めて次の2項目にまとめられよう。Ⅰ 無鉄砲(乱暴・粗雑・向こう見ず・左利き・つむじ曲がり・状況判断が出来ない・廻りの空気が読めない・奇矯で常識外れ)な自分の性向は、親の遺伝のせいである。つまり親の責任であって自分のせいではない。自分は決して悪くない。Ⅱ 自分の過去を思い起こしてみて、まず始めに来るものは損得の感情である。人生を損得勘定で見ている。喜怒哀楽や学問思想国家宗教…