224.『心』先生さよなら――先生はなぜ死んだのか 『心』の先生とK、2人の悲劇については前著でも考察した。もちろん教科書的には、Kの告白を聞いた先生が自分の気持ちを正直にKに打ち明けないで、Kを出し抜くような形でプロポーズして結婚を決めてしまう。この世で一番惨めな思いをしたKは、その前にすでに、女に恋心を抱くような、自身の勉学(道の探求)の邪魔になるような行為について、深く後悔しているところであった。進路や養家とのトラブル、生家からの義絶やそれらを苦にした神経衰弱もあって、若く清廉なKは自らの命を断ってしまう。Kに済まない気持ちでいっぱいの先生は、その後鬱々とした日々を送るが、生きていて何も…