佐藤洋二郎さんから、版元を介してご新著『間違いだらけの日本古代史』(経営科学出版、2024)をご恵送いただいた。ありがとうございます。 娯楽小説にいっさい筆を染めずに、身を切り刻む作品のみを上梓してこられた小説家としては、佐藤さんほど書いた人は、今日ほかにあるまい。作風が本格的で地味だから、お名前を承知せぬかたも一般にはおられようが、間違いなく現代の大作家である。 身辺の人間関係や肉眼で視た人間模様に材を採った作品のほかに、日本古代史へのなみなみならぬ関心を示してこられた。今回はそちら方面のご新著である。 ご本人は「小説家の余技」と控えめにおっしゃるが、数千の神社を観て歩き、数百の離島へと渡り…