🥀苦しみ続ける葵上【源氏物語143 第九帖 葵16】 左大臣家の人たちは、 源氏の愛人をだれかれと数えて、 それらしいのを求めると、 結局六条の御息所と二条の院の女は 源氏のことに愛している人であるだけ夫人に 恨みを持つことも多いわけであると、 こう言って、 物怪に言わせる言葉からその主を知ろうとしても、 何の得るところもなかった。 物怪といっても、 育てた姫君に愛を残した乳母《めのと》というような人、 もしくはこの家を代々敵視して来た亡魂とかが 弱り目につけこんでくるような、 そんなのは決して今度の物怪の主たるものではないらしい。 夫人は泣いてばかりいて、 おりおり胸がせき上がってくるように…