この御子三つになりたまふ年、 御袴着のこと一の宮のたてまつりしに劣らず、 内蔵寮、納殿の物を尽くして、 いみじうせさせたまふ。 それにつけても、世の誹りのみ多かれど、 この御子のおよすげもておはする御容貌心ばへ ありがたくめづらしきまで見えたまふを、 え嫉みあへたまはず。 ものの心知りたまふ人は、 「かかる人も世に出でおはするものなりけり」と、 あさましきまで目をおどろかしたまふ。 第二の皇子が三歳におなりになった時に 袴着《はかまぎ》の式が行なわれた。 前にあった第一の皇子のその式に劣らぬような 派手《はで》な準備の費用が宮廷から支出された。 それにつけても世間はいろいろに批評をしたが、 成…