桃園のお邸《やしき》は北側にある普通の人の出入りする門をはいるのは 自重の足りないことに見られると思って、 西の大門から人をやって案内を申し入れた。 こんな天気になったから、 先触れはあっても源氏は出かけて来ないであろうと 宮は思っておいでになったのであるから、 驚いて大門をおあけさせになるのであった。 出て来た門番の侍が寒そうな姿で、 背中がぞっとするというふうをして、 門の扉をかたかたといわせているが、 これ以外の侍はいないらしい。 「ひどく錠が錆《さ》びていてあきません」 とこぼすのを、源氏は身に沁《し》んで聞いていた。 宮のお若いころ、 自身の生まれたころを源氏が考えてみるとそれはもう…