「ハンバーグくーん」 「はーい」 「えびフライちゃん」 「はーい」 「たまごやきさーん」 「はい」 (真珠まりこ『おべんとうバス』より) 子どもたちの大きなわがままに応える胆力も経済力もない分、だからこそ小さな希望はいくらでも叶えてあげたかった。 それでも寝る前に「『ぐりとぐら』を読んで」と言われるのはしんどかった。 ぐり、ぐら、ぐり、ぐら、ぐり、ぐら、ぐり、ぐら… だって長いんだもん、『ぐりとぐら』は。 そんな時にありがたいのは『おべんとうバス』だった。 短く、キレよく、勢いで乗り切って、そのまんま眠りの世界へ。 集まってきたおかずたちが、弁当箱に勢揃いした瞬間に生命体ではなくなって、具材の…