まだ労働者であった頃、俺はよく地下鉄に乗っていた。通勤ラッシュ時は、東京ほどではないがそれなりに人は多い。地下鉄に乗ると何時も目にする光景があった。それは、食い入るようにスマートフォンの画面を見て、一心不乱に指を動かしている連中のことである。ラッシュ時で身動きが取れない状態でも全くお構いなしである。以前、ラッシュ時の地下鉄に乗った時の事、寿司詰状態の車内で俺の横の奴がポケットからスマートフォンを取り出して操作し始めた。しかし、それを俺の顔の真ん前でするのでたまらない。そいつのスマートフォンが俺の鼻に接触しそうな距離なのである。迷惑千万、不愉快極まりない奴である。俺は車内の揺れを利用してそいつの…