< 話し言葉は神から賜った贈与であり、文字は人間たちの発明である > 酒呑みは暗くなると、なんとも真面目に、律儀に、毎晩、街へ出ていきます。会社、仕事場へ向かう時とは全く調子の違う軽い足取りで、宵闇の街なかへ繰り出していきますねえ。この時間に、上手く精神を解放できるとイイ酒になるんですよねえ。 恋人との待ち合わせでもないですし、誰かと約束があるってことでもないんです。ただ、酒を呑みに、さてさて、今夜はどこへ腰を落ち着けましょうか。 その晩は焼酎バーのノレンをくぐりました。 このところノレンのない酒場も増えてきましたですけどね、ノレンをかき分けるってう動作もまた、イイもんでございますよ。よ、まい…