私自身が「本読み競争」に参加したのは高校三年の三月からです。それまで書店で本を買ったこともなく、本好きの姉にバカにされていました。「本を読まない男に価値はない」と宣告されたときは、「多感な年頃のかわいい弟に、こんな言葉を投げつけるとは」と少々落ち込みましたが、今思えばこれは、神田川くらいには深い姉心。自分の弟が、侮辱されると奮起するということを知っていたのでしょう(ということに、とりあえずしておきます)。「負けてたまるか」と意地になった私は、大学入学直前の春休みから「一日一冊」というノルマを掲げ、飲み過ぎや発熱で朦朧としていても本を読み続けました。(日垣隆『つながる読書術』講談社現代新書、20…