前回、酔っ払って登場した大伴旅人氏は、実はあの歌を詠んで一年もしないうちに、亡くなっている。筑紫でだいぶ体を壊していたらしい。赴任早々、愛妻を亡くしたことも痛手だったのかもしれない。 今日の歌は、その死を悼んだ舎人が詠んだものである。 天平三年辛未秋七月、大納言大伴卿薨之時 歌六首 愛八師匠 栄之君乃 伊座勢婆 昨日毛今日毛 吾乎召麻之乎 (454) はしきやし 栄えし君の いましせば 昨日も今日も 我を召さましを はしきやし さかえしきみの いましせば きのうもけふも わをめしましを 【普通の意訳】 あああああああっ あれほどご立派だった我が君が、もしいらっしゃったなら、昨日も今日も、このワ…