訓読 >>> 1688あぶり干(ほ)す人もあれやも濡れ衣(ぎぬ)を家には遣(や)らな旅のしるしに 1689荒磯辺(ありそへ)につきて漕(こ)がさね杏人(からたち)の浜を過ぐれば恋(こほ)しくありなり 要旨 >>> 〈1688〉ずぶぬれになった着物を火にあぶって乾かしてくれる人がいるはずもいない。いっそ家に送ろうか旅路にいるという証拠に。 〈1689〉岩場に沿って船を漕いでください。杏人の浜を過ぎれば恋してたまらなくなるそうだから。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「名木川(なきがわ)にて作れる歌」2首。名木川は、京都府宇治市南部を流れていた川ではないかとされます。1688の「あれやも」の「…