●歌は、「港風寒く吹くらし奈呉の江に妻呼び交し鶴多に鳴く(大伴家持 17-4018)」である。 【奈呉の江】 「大伴家持(巻十七‐四〇一八)(歌は省略) 国庁のあった伏木(ふしき)の台地からはすぐ東方に射水川(小矢部(おやべ)川)の川筋も河口も富山湾も新湊(しんみなと)・放生津(ほうじょうづ)潟方面もよく見えた。官人秦八千島(はだのやちじま)の館での宴の歌の左駐にも『館(やかた)の客屋は居ながらに蒼海(おほうみ)を望む』とある。・・・この新湊一帯の海浜地が奈呉(なご)で、奈呉の江は放生津潟をさすのであろう。・・・奈呉の鶴は三首もよまれているから鶴の飛来も多かったところだろう。この歌は天平二〇年…