若松英輔『悲しみの秘義』(文春文庫 2023年) 若松英輔『生きる哲学』(文春新書 2016年) 堀江敏幸の後は若松英輔を少し読んでみます。この二人は、文章の風合いも書いている内容も異なりますが、私のなかではなぜか同じグループのように感じています。二人とも、大学でフランス文学を学んでいて、しかもその大学が早稲田と慶応という仏文の伝統ある両校であること、生まれも近いこと(1964年と1968年)、片や岐阜、片や新潟と地方出身者であること、などがそう思ってしまう理由かもしれません。 しかし読めばすぐ分かりますが、両者の違いは、堀江のほうがフランス文学の王道に近いところを歩んでいるのに対し、若松英輔…