問題文は国文学研究者川平敏文氏の『徒然草ー無常観を超えた魅力』(中央公論新社)からの抜粋である。この中で、「つれづれ」の解釈が時代とともに変遷してきたことを述べているが、その中で、国文学者の論が同時代の文芸評論家に影響を与え、またその評論家たちの論が国文学者の研究に逆輸入されるという関係を実証的に示している。長くなるが引用してみる。(下線は筆者) 「島津(久基)論文の影響は、特に評論家たちの『徒然草』観に顕著に認められる。たとえば小林秀雄は、のちに『無常といふ事』に収められる「徒然草」(昭和十七年〈1942〉初出)と題するエッセイの中で、「兼好にとって徒然とは、「紛るる方なく、唯独り在る」幸福…