いとにほひやかにうつくしげなる人の、 いたう面痩せて、 いとあはれとものを思ひしみながら、 言に出でても聞こえやらず、 あるかなきかに消え入りつつものしたまふを御覧ずるに、 来し方行く末思し召されず、 よろづのことを泣く泣く契りのたまはすれど、 御いらへもえ聞こえたまはず‥ はなやかな顔だちの美人が非常に痩《や》せてしまって、 心の中には帝とお別れして行く無限の悲しみがあったが 口へは何も出して言うことのできないのがこの人の性質である。 あるかないかに弱っているのを御覧になると 帝は過去も未来も 真暗《まっくら》になった気があそばすのであった。 泣く泣くいろいろな頼もしい将来の約束をあそばされ…