「あれ以来、僕は自分を信じていない。心の弱い人間だ。いつかまた同じことをやるんじゃないかと怖いんだ。だから、ちょうどあの頃、面接にやって来て、まだ働いたこともないくせに、定時で帰る会社を作りたい、と言ってのけた君を雇ったんだ」 そう話す灰原の顔には重圧に耐える苦しさが浮かんでいる。「君のような面倒な社員がいる限り、僕はこう考えざるを得なくなる。定時後の時間は社員のものだ。そして、彼らの権利を守るために頭を使わなければならない。どうすれば最も効率よく利益を出すことができるか」(朱野帰子『わたし、定時で帰ります。2』新潮文庫、2019) こんにちは。先日、朱野帰子さんの『わたし、定時で帰ります。』…