アルザス語:Elsàss, アレマン語:Elsäß, 標準ドイツ語:Elsass, フランス語・英語:Alsace
フランス北東部に存在する地域圏。西側の大部分をロレーヌ地域圏と接し、残りはフランシュ・コンテ地域圏と接している。東はドイツとスイスに接する。南北に細長く展開し、北部がバ・ラン県(「ライン川下流」の意味)、南部がオー・ラン県(「ライン川上流」の意味)にそれぞれ分かれる。首府はストラスブール(独:シュトラースブルク)。
アルザスの名前はドイツ語のEll-sassから取られている。アルザスはかつては神聖ローマ帝国の領地であり、17世紀から19世紀にかけて何度もフランスとドイツを行き来してきた。アルザスの住民の大部分はドイツ系のアレマン人一派であるアルザス人で、人口130万人の住民がドイツ語の方言であるアルザス語を言語としており、アルザスはドイツ文化において重要な役割を果たしてきた。王制時代は「ブルボン家に仕えるドイツ人」と呼ばれていた。
鉄鉱石や石炭を豊富に産出し、ライン川の水運を利用して古くから工業が盛んに行われていたことや、交通の要衝だったことも手伝って長くドイツとフランスの間で領土の獲得競争が繰り広げられてきた。エルザス人(アルザス人)は明らかな異文化であるフランスとは同化せず、一方でドイツにあってはツァーベルン事件に代表されるように一等国民として扱わなかったために、独自のアイデンティティを保ち続けることとなった。
1870年の普仏戦争や1940年の第二次世界大戦におけるフランス降伏に伴ってドイツに占領されたが、戦後はフランスが再占領し現在に至っている。この間、強引な同化政策が行われたことで、多くの住民はフランス語とアルザス語のバイリンガルであり、若年層ほどフランス語を多用する。近年になってフランス政府は同化政策を改めたが、フランス語しか話せない若者も少なくなく、今後の教育方針をめぐる議論は続いている。ヨーロッパ有数の経済地域であるドイツ・ライン川中流域との結びつきを深めており、生活水準はフランスの中でも高い方に属する。