昭和五年発行、鶴見祐輔著、『自由人の旅日記』。 ここ数日来、いろいろとネタにさせていただいている古書である。 総ページ数、520頁。なかなかの厚さといっていい。読み応え十分な一冊だった。 (鶴見祐輔、シカゴ、ミシガン湖畔にて) 就中、もっとも深く感銘を受けた箇所はどこかと訊かれれば、私は即座に、 人間の心を見抜く特別の力をそなへられたエドワード七世は、貧民窟を訪問するときにも、立派な装束をしてゆかれた。貴き王者が、貧しき人の上を忘れない、といふことを、彼等に知らすためである。貧民がいかにも王様らしいお姿を見て、随喜の涙を流した。彼等は王者は王者らしく、貴族は貴族らしかれと冀(こひねが)ふ。倫敦…