四国は高知県内の良心市の習俗は、昭和どころか大正中期の段階で、既に評判になっている。 左様、良心市。 無人販売所と言い換えてもよい。 (Wikipediaより、良心市) 掘っ立て小屋の屋根の下、籠なり笊なり何なりに野菜や果実を盛り上げて、手書きの値札と料金箱とを設置したきり、別に見張りも立てもせず、客の正直に支払いの一切を依頼する、そういう形式の店舗のことだ。 田舎の路傍でよく目に入る景色であろう。 加藤咄堂の大著たる、 「高知県に入れば、道路に蓆を布きて菓物類を並べたゞ代価を附したるのみて一の番人なく得んと欲するものは相当の代価を置きて持ち去り、店頭に代価を付して草鞋を吊し、傍くに竹筒を置け…