鉄道王の没落は、世界大戦の後に来た。 一九一四年に端を発する大戦争。トーマス・アルバ・エジソンをして「この戦争で人類の歴史は一気に二百五十年跳んだ」と唸らせた通り、一千万の生命(いのち)を奪った未曾有の悲劇は、しかし同時に、地球文明そのものを未来に向けて猛烈な速度で射出する、一種カタパルト的な役目も担った。 (人垣前列中央にフーヴァー、その左にエジソン、左端にフォード) 北米大陸の交通事情も、その影響から逃れることは叶わなかった。 もろに喰ったといっていい。それまでこの国で生きる一体誰が、鉄道王とその一族の光輝に翳りが差すなどと、そんな不遜な予測をしたか。 居なかった。 絶無であると断言してい…