キリーロフは、自分は既に救われたと信じている。 なぜなら、究極の真理を悟ったから。あとは、その具体的実践の問題が残るだけだ。 オウム真理教の内部にカメラを持ち込み、信者たちの姿を曝け出した「A」「A2」というドキュメンタリー作品(森達也監督)がある。 キリーロフという人物は、そこに出てきたオウムの修行者の姿と被って仕方がない。 これは決して彼らを馬鹿にしているのではない、いや、馬鹿にしているのかもしれない。 なぜなら、それはあの頃の自分の姿でもあるからだ。 オウムにこそ入信しなかったものの、20代の自分は、「永久調和の瞬間」を垣間見たと思い込んで、「すべてはすばらしい」と思い込んでいた。 キリ…