まったく知らない土地で見ず知らずの人たちに囲まれて暮らすって、こんなにも身の置きどころのないものなのかと実感する。酒場で殴り合いの騒動を引き起こし、さらし首になった身の上を考えれば当たり前のことではあるが。 ラッタイやタルムバークが懐かしい。そういえば、今夜眠る場所のあてがないという経験はしてこなかった気がする。住むところがあったあの頃はどん底のように思えて、まだまだツキに見放されていなかったのかもしれない。粉屋の裏稼業の手伝いを打診されたことはあったけれど、強要されたわけじゃないし、ヘンリーのためのベッドとチェストはずっとそのままだった。ご飯にもありつけたしね。よくしてもらってたんだな。 考…