なんとなくギターを始めた。 正確には、再開したといった方がいい。25年ぶりだ。 ボロボロのハードケースに保管していたガットギターを手に取り爪弾いてみる。 不思議といくつかのコードは覚えている。 スチール弦はサビつきナイロン弦のチューニングは容易に合わない。 指先に痛みを感じながらも、20代の青春を取り戻すかのようにスリーコード、フォーコード、と記憶を頼りに和音進行へ身体を委ねる。 あっという間に時間が過ぎて、もうこれ以上記憶からは何も引き出せないことが分かった瞬間、青春時代は短かったんだなと悟る。 何かを始めるためには何かを捨てなければならない もう随分と昔から、いやというほど分かっていた事実…