昔、ジャズクラブを巡るツアーに参加して、NYに行った時のこと。既婚の友人から「ニューヨークに行くなら、無くしてしまった結婚指輪を買ってきてくれる?」と頼まれた。自分の財布じゃなくてティファニー本店で買い物ができる というなかなかのチャンス! 2つ返事で請け合った。 指輪の売り場には先客がいた。白髪の老人が、手にはティファニー製ではないであろう指輪をはめ、ゆっくりと語っている。亡き夫との指輪にまつわる思い出話だった。商品を買う気配はなくても、かなり長い間、ベテランの女性スタッフは、その話を真摯に聴いてあげていた。老婦人は、多分寂しかったのだろう。指輪のことがわかる人に話を聞いてもらいたかったんだ…