オーストラリアの女性作家ジェラルディン・ブルックス(1955年生)の長篇小説『古書の来歴』(2008年、日本語訳・森嶋マリ、創元推理文庫、2023年)を読んだ。 この作品は、14世紀のイベリア半島で作られたとされ、現在サラエボのボスニア・ヘルツェゴビナ博物館に収蔵されている古書『サラエボ・ハガダー』がどのような人々の手をとおって同博物館に収蔵されるようになったのかを、架空の物語と1996年時点でそのハガダーを精査している学芸員ハンナ・ヒースの視点をからませながら描いた一種の歴史小説。オリジナル・タイトルは「People of the Book」で、「本をめぐる人々」といった意味。 数々の危機を…