Julien Gracq 1910-2007 フランスの小説家。本名ルイ・ポワリエ。青年期にアンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストたちと親交を結ぶ。戦後はパリの高校などで地歴の教師として勤務するかたわら創作活動を行う。
1951年『シルトの岸辺』に対しゴンクール賞を与えられるが、受賞を拒否する。以後も文壇と隔絶して過ごす。
主な作品
シルトの岸辺 (岩波文庫) 作者: ジュリアン・グラック,安藤元雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/02/15 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る 唐突にあなたはこれこれの星回りの下に生まれたんですよとか、あなたの人生の行く手には避けがたい運命が待ち受けているのですとか言われたら、多くの人は一笑に付すだろう。19世紀の近代小説がビルドゥングスロマンを定型にしていたのは、近代においては、個人は自分の人生を自分で切り開くという課題を背負っているからだ。20世紀に入って、近代的自我の葛藤を描く小説とは異なる、カフカ的不条理の世界や実存主義、アンチロマンなどの方…
だいぶ前から読みかけだったので、改めて読み返してみる。 この本は各篇が数ページから成る散文詩である。 恐らく、眼に見えるものと、そのレトリックの意外性が、詩情を呼び起こすのであろう。 だが、パリの街並みにも、フランスの田園風景にも興味はない。 だから、その意外性の距離感が、解からないのだった。 読み返していくうちに、以前読み通せなかった、その感覚が蘇ってきた。 大いなる自由作者:ジュリアン グラック思潮社Amazonランキング参加中読書
レトリック・非限定アルゴールの城にて (白水Uブックス 79 小説のシュルレアリスム)作者:グラック,ジュリアン,ジュリアン・グラック白水社Amazon グラックが描いているのは、非限定の世界ではないだろうか?いつとも、どことも知れない世界で、登場する人物もその一部であるかのようだ。それは叙事詩のように、あるいは年代記のように、出来事が綴られる。しかしそこには様々なレトリックが積み重ねられ、次から次へと繋げられる。物語の筋は明かされない。物語に意味があるのでは無い。それはそこで起こったことであり、何故起こったかとか、その出来事に込められた意味だとか、そういった事ではないのだと思う。日常の延長か…
何処でもない何時でもないシルトの岸辺 (ちくま文庫 く 19-1)作者:ジュリアン グラック筑摩書房Amazon 時代や場所が特定されない舞台での、回りくどい文章と行き先の見えない物語。ものすごく遅いようでいてものすごい速さがあって、意味が判らないようでいて感銘を受ける。 これはシュルレアリスムなのかと言えば、単なる幻想譚ではない本来的な意味でのシュルレアリスムに近いと思う。 何故だか、政庁は映画の「ブレードランナー」のタイレル社を思い起こさせる。ランキング参加中読書