Julien Gracq 1910-2007 フランスの小説家。本名ルイ・ポワリエ。青年期にアンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストたちと親交を結ぶ。戦後はパリの高校などで地歴の教師として勤務するかたわら創作活動を行う。
1951年『シルトの岸辺』に対しゴンクール賞を与えられるが、受賞を拒否する。以後も文壇と隔絶して過ごす。
主な作品
共同通信の記事; 詩人の天沢退二郎さん死去 宮沢賢治研究、バタイユ翻訳 1/27(金) 21:51配信 共同通信 フランス文学者で宮沢賢治の研究でも知られる詩人の天沢退二郎(あまざわ・たいじろう)さん*1が25日午後7時35分、千葉市稲毛区の病院で死去した。86歳。東京都出身。葬儀は近親者で行う。喪主は妻でイラストレーターのマリ林(まりりん)さん。 幼い頃から宮沢賢治の作品に親しみ、「校本宮沢賢治全集」の編著に関わった。宮沢賢治学会の代表理事も務め、少年少女のための小説「オレンジ党」シリーズなども執筆した。 詩集で藤村記念歴程賞、高見順賞などを受賞。ジョルジュ・バタイユやアンリ・ボスコの翻訳も…
天沢退二郎が亡くなった。天沢の名前はグラックを通じて知った。そのころシュルレアリスムに関心があって、調べていくうちジュリアン・グラックに行きついた。詩集『大いなる自由』『異国の女に捧げる散文』の訳者が天沢だった。グラックはヌーヴォー・ロマンについて《私個人にとっては何の喜びももたらすところはありません》と述べている(『偏愛の文学』所収「文学はなぜ息苦しいか」)。そっちも読みたくなった。有名どころは、周知のとおり、サロート、シモン、ビュトール、そしてロブ=グリエである。打率でいえば、ロブ=グリエがいちばん低かった。ほとんどおもしろみを感じられなかった。しかし、一作だけ、強烈に好きな作品があった。…
・東日本大震災、留学への準備、身内の不幸などによって不可避的に文脈が変わらざるを得なかった2011年までに読んだ「大好きな本」。・ほぼすべてが2011年までに読んだ本だが、「2011年までに着手して、読み了えたのは2012年以後」の本も数冊だけ含まれる(『空を引き寄せる石』など)。・リストを作り始めたのは2014年くらいだったと思うが、幸いなことに復刊された本も少なくない。作品集などは復刊されると収録作に異同が出る場合もあり、そのそれぞれを調べることはあきらめ、書誌情報は原則当時のままにしてある。 山尾悠子『夢の遠近法』(国書刊行会) 澁澤龍彦『高丘親王航海記』(文春文庫) 荒巻義雄『神聖代』…
小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。 眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条理なことだ。 気になる女の子をデートに誘ったけど、やってこない時にでも読んでみてほしい(絶対に違う)。冗談はさておいて、待つことの不条理を扱った小説・戯曲を紹介していきたい。 ゴドーを待ちながら / サミュエル・ベケット タタール人の砂漠 / ブッツァーティ シルトの岸辺 / ジュリアン・グラック 夷狄を待ちながら / クッツェー ゴドーを待ちながら / サ…
ドイツの小説家・劇作家ハインリヒ・フォン・クライスト(1777-1811)の 掌短編小説6編+エッセイ2編を収録した作品集『チリの地震』を読了。 チリの地震---クライスト短篇集 (KAWADEルネサンス/河出文庫) 作者:H・V・クライスト 河出書房新社 Amazon チリの地震 作者:ハインリヒ・フォン クライスト 王国社 Amazon ■ チリの地震(Das Erdbeben in Chili,1807) 1647年、チリの首都サンティアゴ。 ジェローニモ・ルグェーラ青年は家庭教師を務めていた貴族の娘ジョセフェと 恋仲になったことが露見し、クビに。 ジョセフェは修道院へ送られたが、ジェロ…
スイス生まれの中国学者がパリの地の聴衆に向けて講義した荘子の記録。日本人が日本人に向けて語る荘子とはだいぶ違った印象の深読みが実践されていて面白い。荘子を語るにあたって引き合い参照される人物たちがまず独特で、荘子像を新たなかたちで印象づけるとともに、荘子と対比されるそれぞれの人物たちも荘子側から解釈され直すようなところがあって、新鮮。まずは、記述と説明との差異についてヴィトゲンシュタインへの類想からはじまり、そのあと、言語と幻想の関係性についてヴァレリーへ、さらにジュリアン・グラック、スピノザ、モンテーニュ、クライスト、アンリ・ミショー、バッハ、ブルトン、マックス・エルンストなどが召喚され、荘…
いつも同じ言い訳で恥ずかしいのだが、なかなかゆっくりと文章を考える時間をとることができない(だからこの記事も、遅れに遅れて9月27日に書いている)。しかも、こんな時に限って、重々しいテーマが浮かぶ。とある小説をぜひ論じてみたいという思いに、切実に捉われているのだ。 件の書は、ブッツァーティの『タタール人の砂漠』(岩波文庫)。 この年になるまで存在を知らなかった。半年ほど前、とある仕事がきっかけでジュリアン・グラックの『シルトの岸辺』を読み、いわばその「元ネタ」としてこの小説を知ったのだが、なんとなく手に取りページを繰るや、疾風に運ばれるごとく一挙に通読した。 人にこの書を勧めるための言葉は、「…
フランス文学の孤峰ジュリアン・グラックに少なくない影響を与え、マンディアルグも熱愛を公言するドイツ文学の一冊(※1)。天沢退二郎も本書にはかなりこだわっている形跡がみられる。読めば読むほど不吉な精霊に身体が囲繞されていく稀有な読書体験。 雲香庵という人里はなれた小さなコミュニティに住み、「私」と弟オートは、大理石の断崖の縁に立つ図書室の二階にある静謐な植物標本室で日々植物の研究にいそしんでいる。透きとおる真鍮の光沢を帯びた鱗を持つ槍尾蛇や真珠色の蜥蜴、香りを発散する美しい花々も棲むこの庵には、他にも老女ランプーザや赤ん坊エリオといった人々が暮らして交流が生まれているが、遠方よりの〈森の統領〉に…