Julien Gracq 1910-2007 フランスの小説家。本名ルイ・ポワリエ。青年期にアンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストたちと親交を結ぶ。戦後はパリの高校などで地歴の教師として勤務するかたわら創作活動を行う。
1951年『シルトの岸辺』に対しゴンクール賞を与えられるが、受賞を拒否する。以後も文壇と隔絶して過ごす。
主な作品
シルトの岸辺 (岩波文庫) 作者: ジュリアン・グラック,安藤元雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/02/15 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る 唐突にあなたはこれこれの星回りの下に生まれたんですよとか、あなたの人生の行く手には避けがたい運命が待ち受けているのですとか言われたら、多くの人は一笑に付すだろう。19世紀の近代小説がビルドゥングスロマンを定型にしていたのは、近代においては、個人は自分の人生を自分で切り開くという課題を背負っているからだ。20世紀に入って、近代的自我の葛藤を描く小説とは異なる、カフカ的不条理の世界や実存主義、アンチロマンなどの方…
Bartleby y compañía(2000)Enrique Vila-Matas 僕は以前から、作品を生み出さなくなった芸術家に興味がありました。 形として残さなくなったのか、創造すること自体をやめてしまったのか、はたまた、別の形を選択したのか。 人によって事情は異なるでしょうが、その理由の一端でも知れたらと考えたのです。 そうした疑問に向き合うために、古今東西の様々な「作品を生み出さなくなった」アーティストたち(主に作家)をまとめてくれたのが、エンリーケ・ビラ=マタスの『バートルビーと仲間たち』(写真)です。 僕にとっては非常に重要なテーマなので、もっと早く感想を書いてもよかったのです…
ミカエル・ジャレル: 管弦楽作品集イリア・グリンゴルツ 、 フローラン・ジョドレ 、 パスカル・ロフェ 、 フランス国立ロワール管弦楽団 タワーレコード youtu.be スイスの作曲家ミカエル・ジャレルの音楽は「夢と非現実の状態を真実の瞬間を探し求めながら考察する」と言われています。最小の音の聞こえ方ともっとも遅いテンポという、時間が静止するところに見つかることの多い、真実。きわめて個人的なアプローチにより彼は、第二次世界大戦後の音楽のいろいろな技法をはじめとするレガシーを統合し、音楽の真の「詩」を示してみせます。 『ジャレル:協奏曲集』(BIS SA-2482)を録音したパスカル・ロフェ率…
ひとたび足を地につけ、そこでバランスをとることを覚えた瞬間、人は永遠に大地から離れられなくなる。 (グエン・ゴック・トゥアン/加藤栄・訳『囚われた天使たちの丘』) 朝方、5時ごろだったと思うが、胸の悪さで目が覚めた。目が覚める直前にげっぷしたような感触があった。しばらく横になっていたのだが、あんまりよくならないふうだった。胃をやっているときの気持ち悪さとはちょっと違った。逆流性食道炎っぽいなと思った。どうなるかわからんが試してみようと思い、体を起こして寝床に座ってみると、せりあがっていたものがみるみるうちに落下していくのがわかった。それでひと心地ついた。人間なんてしょせんは一本の上等な筒に過ぎ…
1. Ambre Topkapi | Pierre Bourdon (2003) 3. Enlèvement au Sérail | Francis Kurkdjian (2006) 4. Promesse de l’Aube | Francis Kurkdjian (2006) 5. Rose de Siwa | Francis Kurkdjian (2006) 2. Invasion Barbare | Stephanie Bakouche (2005) 6. Peche Cardinal | Amandine Clerc-Marie (2008) 7. La Rivage des Syr…
The Atrocity Exhibition(1970)J. G. Ballard 一九六〇年代、ニューウェーブと呼ばれる新しいSF小説が生まれました。その代表的な存在がJ・G・バラードです。 彼によると、それまでのSFは狭く、制約された領域で、宇宙や未来を舞台にした単調な形式が重んじられたとのことです。 それ以外のものは没にされた時代、バラードは宇宙を舞台にするのではなく、精神世界(インナースペース)に視点を移し、スペキュレイティブフィクションといわれる作品を生み出してゆきました。 今では『結晶世界』『クラッシュ』『ハイ-ライズ』『夢幻会社』といった長編小説が、彼の代表作として高い評価を得…
この長編小説では当初主要テーマとして照明を浴びて舞台前面を占めていたパリ社交界や恋愛模様が、読み進むにつれやがて少しずつその重要性を薄めてゆきます。反対にそうした全般的な流れに逆らうようにして、それまで目立たなかった脇役たちが舞台の袖から中央へと登場してきます。長く主役をはってきたものは翳り、それに代わりそれまで出番も少なく、役割も明確ではなかった端役たちが互いに関連を持ち始め、新たな役回りも得て、作家志望の主人公を創作へと導きます。 以下のⅢ章では、まず19世紀から20世紀に移る端境期のパリ貴族階級で起きる大きな変動を描きます。また、それとともに間欠的に起きる主人公マルセルの内面における大き…
高原英理『日々のきのこ』 深堀骨『腿太郎伝説(人呼んで、腿伝)』 支倉凍砂『瀬戸内海の見える一軒家 庭と神様、しっぽ付き』 杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』 柳瀬博一『国道16号線 「日本」を創った道』 原武史『「線」の思考 鉄道と宗教と天皇と』 奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』 高原英理『日々のきのこ』 日々のきのこ作者:高原英理河出書房新社Amazon半分以上菌類に侵された人数が人口の半分を超えるという菌類支配が進んだ世界で、菌類と共生あるいは侵食され、意識ごと変容していく人間たち…
ジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』(岩崎力訳、中公文庫ラ3-1、中央公論新社、2023/07/25)Jean-Louis de Rambures, Comment travaillent les écrivains, éditions Flammarion, 1978 1979年に中央公論社から刊行された本の文庫版が刊行された。 評論家・ジャーナリストのジャン=ルイ・ド・ランビュール(1930-2006)が「ル・モンド」紙の文芸特集欄に掲載した25人の作家たちへのインタヴューをまとめた本。 原題は「作家たちはどのように仕事をするか」で、ランビュール氏は以下に名前を並べた作家たち…
👇のリストがベース 1~1001番までは2007年版の年代順。 1002番以降は2007年以降に追加された書籍順。 英語表記は翻訳されていない本。(見落としあったらコメントください。。。) 1000~1100/1300くらいは翻訳されてそう。 訳が古かったり、世界文学全集の中だけ収録されているものだったり、割と希少本も少なくないので、図書館など活用して消化していきたい… 1. Aesop's Fables (Aesop) 1 イソップ寓話集 アイソーポス 2. Ovid's Metamorphoses 2 変身物語 オウィディウス 3. Chaireas and Kallirhoe 3 カイレ…
数年前に読んだ本書を今回再読してみたが、残念ながらやはり論述の速さについてゆけない箇所がいくつか残った。著者の工藤氏は多数の引用を行うが、集められた資料は、時に狭い意味での風俗の事例として使われている。 結論部分でも、著者工藤氏は女性と性的倒錯が支配的だった暗いフランスの十九世紀末の風俗を描くプルーストは「傍観者として一生をおわってしまったように見える」が、一方コレットのほうは二十世紀の新しいタイプの女性の風俗を描いた、と大胆にまとめている。私には短い結論部分をそのように読んだ。 しかし、はたしてそうだろうか。気になった主な点を本書の冒頭からいくつか拾い出してみよう。 「芸術家小説」という主要…
樹木の顔は多くの場合上向きであり、処女林上を飛んだことのある人々が言うように、その美しさは俯瞰する者に向けられている。そして我々の風土の中で最も上を向いているのは松林である。松林の下を歩むとき我々の目が捉えるものは、老朽化して神経を絶たれた見るも無残なものばかりである。地に落ちた枯枝の山。乾き切り、表面は剥がれ、しかしまだ幹に付着している低い枝枝の醜い折れ残り。半ば砕けて灰化しながらも、それでもまだ低い枝にぶら下がっている過ぎにし年の松毬の残骸。貧弱な葉叢の暗くくすんだ緑。下から見上げた時の松林の顔は、その全てが死んだ木と乾いた松葉で作られている。 砂丘を登り、光に照らされた森を一瞥するや否や…