本作には、《孤独》の闇のなかでひたすらスパゲティーを作り続ける主人公の姿が描かれています。 ボクら大人たちが待つ「まっとうで平凡な世界」への船出を目前にして、この若者はいったい何を躊躇しているのでしょうか? 【要旨】 1971年、それは僕にとってスパゲティーの年だった。 僕は一人でスパゲティーを茹で一人で食べ続けた。 知り合いの消息を尋ねる電話がかかってきたとき、僕は過去の繋がりを断ち切るように空想の鍋に空想のスパゲティーを投じる。 【孤独のスパゲティー】 春、夏、秋、と僕はスパゲティーを茹でつづけた。それはまるで何かへの復讐のようでもあった。裏切った恋人から送られた古い恋文の束を暖炉の火の中…